中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

スチュワードシップ・コードの改訂に向けた動き-スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会が開催(2019年9月25日)

9月25日に金融庁スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会を開催することを公表しました。2017年に改訂されたスチュワードシップ・コードの改訂に向けての検討になります。

スチュワードシップ・コードとは、機関投資家がスチュワードシップ責任を果たすに当たり有用と考えられる諸原則を纏めたもので、2014年に策定、その後、2017年に改訂されています。

スチュワードシップ責任とは、機関投資家が投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値向上や持続的成長を促すことにより、顧客の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任を意味します。

では、今回の有識者検検討会の狙いは何でしょうか。

金融庁のホームページに第1回検討会の事務局資料が掲載されており、スチュワードシップ・コードをめぐる状況と論点等の記述があります。 「1 建設的な対話の実質化に向けた取組み」と「2 議決権行使助言会社の在り方」がポイントになります。

1については、個別の議決権行使に係る賛否の理由、企業との対話活動とその結果等の説明や情報提供の充実を運用機関は行うことが求められます。

次に、2については、議決権行使助言会社は、十分かつ適切な人的・組織的体制を整備することと助言策定プロセスの具体的な公表、企業の開示情報のみに頼るのではなく必要に応じて自ら企業と積極的に意見公交換しつつ助言を行うことが求められそうです。

 ごく簡単に一言でまとめると、ISSやグラスルイスといった議決権行使助言会社はその判断について機関投資家の賛否行使に与える影響が極めて大きいため、外部公表情報だけでなく自らも積極的に企業の情報を正確に把握し、また、機関投資家議決権行使助言会社の意見に依拠するだけでなく、対話をより深めてしっかりと議決権行使の判断をすることが改訂で目指すところかと思います。

議決権行使助言会社の議決権賛否推奨基準は、機関投資家の意見を最大公約的に纏めたものになります。従い、それを機関投資家が参考にするのは分かります。自分たちの意見とベクトルがあっているからです。

しかし、個社別の事情を考慮する必要もあるはずです。社外取締役が3分の1以上必要といってもスタートアップの上場企業には、事業を直接行うわけでもない高齢の社外取やビジネスが全く分からない大学教授などがいても役立たずであり、まずは社内取締役が必死に事業を拡大するのが重要であり投資家もそれを望みます。このように企業によって状況は異なります。

機関投資家は、投資先企業と対話を実施しているかと思いますが、今後は更なる対話の充実が求められそうです。

対話とは機関投資家と企業の討議ですので、企業側としても対話をより充実したものとするには、努力をする必要があります。