中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

「公正な買収の在り方に関する研究会」での参考になる意見を紹介します! ー 第2回議事要旨より

本日は第3回会議のはずですが、事務局資料はまだ経産省のホームページには掲載されていない模様です。本日は第2回会議(12月1日)での議事要旨から、各委員の発言の中から興味深いと私が思った箇所を抜粋・紹介します。なお、第2回の議事要旨は次のとおりです。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kosei_baishu/pdf/002_gijiyoshi.pdf

5ページからの抜粋になります。なお、以下において太字又は黄色でハイライトした箇所は私が強調のため記しましたので、ご了承下さい。

アメリカ型の現行インフラを、日本において否定すべきではない。経営陣が日常的に会社を経営している中で企業価値について相対比較で一番分かっているはずなのに、買収防衛策の話になると、経営権の帰趨に関するもので利益相反があるとして、全て株主が判断する必要があるという話になることには違和感がある。

これは2年ほど前にある大手の機関投資家の方も同じようなことを言っていました。何でも株主に任せるのは良くないと。私もそう思います。次に6ページからの抜粋になります。

平時導入型買収防衛策を全否定する必要はない。買収防衛策を導入することで買収者の情報開示等や企業価値等の側面においてプラスの側面があるにもかかわらず、機関投資家ステレオタイプに、そうした手続を導入すること自体に反対するとか、経営陣の選任議案に対して反対するということはおかしいのではないかアメリカでは判
例法で、EU では制度で、こうした手続が整備されている一方で、日本にはいずれもない状況なので日本企業は買収防衛策を手続として導入しているわけだから、手続に対する誤解を解いた上で、平時導入型買収防衛策の可能性は残しておくべきではないか。

これも全くその通りかと思います。機関投資家と会話をすると、買収防衛策のことが分かっていないと感じることも案外多いです。勿論、表面的なところは理解しているのでしょうが、会社サイドから一歩踏み込んだ質問を機関投資家の担当者にすると「この人、深いところは全然分かっていないな」と感じることが、私の経験則上、複数回ありました。それもあってステレオタイプな反対となるのかも知れませんね。次に9ページからの抜粋です。

対抗措置の必要性について、いかなる買収提案であっても、対象企業が、現経営陣
のもとで果たしてきた社会責任が継続的に全うされるのか、様々なステークホルダーにも意見を聴きながら検討・交渉して判断するための十分な情報と期間は必要である。その中で、企業価値・株主共同の利益が毀損されるかを判断する際に、従業員・顧客・取引先・地域社会等のステークホルダーの利益が毀損されるかどうかという点も考慮すべきであることを指針にぜひ加えていただきたい

他のステークホルダーの意見を聞いて欲しいということですね。買収防衛策はどうしても株主の意思を毀損するか否かが優先されてきましたが、他のステークホルダーの意見も加えるべきかと。2005年頃は「会社は株主のもの」という考えでしたが、この考えは今は古いので。最後に11ページからの抜粋です。

最後に、新たな指針を作るにあたっては、機関投資家の行為規範を是非作っていただきたい。大手機関投資家のなかには、事案の個別性が強いため本来個別判断がなされるべき有事導入型買収防衛策議案であっても、議決権行使基準にある「買収防衛策」の定義では平時・有事を区別していないというそれだけの理由で議決権行使基準に基づき形式的に判断するという投資家がいる。これでは本末転倒である。また、ROE5%未満だから買収防衛策や対抗措置の発動に反対するという投資家もいるが、ROE5%未満だからといって、買収者がどれほど属性が悪くても(極端にいえば反社会的勢力や反市場勢力でも)買収防衛策や対抗措置の発動に反対するのかという話になる。本来的には有事には個別判断が必要。そういう規範を入れてもらわないと、株主意思に全面的に委ねることにも危険が伴う。そういう観点で、機関投資家の判断のガイドラインを指針に盛り込んでいただきたい。

この発言ですが、とても大切と思います。読んでいて「そうだよな」と感じます。先に触れたように、買収防衛策等の議決権行使に関与する機関投資家(いわゆる責任投資の関係の方)の資質というか、能力はまだまだかなと個人的には感じることもあります。議決権行使は企業の経営に重大な影響を与えるものですから、機関投資家には買収防衛策については深い理解の下で、個社の事情を踏まえた、議決権行使をしっかりとして欲しいなと思います。1社に十分に時間をかけられないというのであれば、担当者を増員するか、投資先銘柄数を減らせばよいのだと思います。