中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第12回) ー 本当にコンプライ出来ているか?

1週間の夏季休暇も明日で終わり、月曜日から仕事に復帰です。火曜日から木曜日まで旅行をしており、旅行中も時間を見て新聞や読書をしようと思いましたが、株価をスマホで確認する程度で終わりました。移動が車であり、そもそも旅先で新聞や読書をするなどナンセンスだなと今更ながら感じた次第です(毎回、そう感じながらも読みもしない本を旅先に持参しているのですが)。

さて、8月18日の新聞に次の記事(電子版)がありました。ツイッターでも紹介したのですが、これに関連した記事を書きたいと思います。

東証プライム企業、「持続可能性」指針順守63%どまり: 日本経済新聞

今更ですが、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)では、コンプライ又はエクスプレインが求められています。CGコードの原則・補充原則の1つ1つに対して、必ずしも企業は遵守する(コンプライ)必要はなく、コンプライできないということであれば、その理由を説明(エクスプレイン)することでも何ら問題ないのです。

例えば、プライム上場企業には社外取締役3分の1以上が求められていますが、3分の1が必要ないと考える企業は、その理由をエクスプレインすることで足ります。だから上記の日経の記事のように「『持続可能性』順守63%どまり」であっても何ら問題はなく、逆に遵守しないことがあたかも悪いことであるかのような新聞の見出しがいかがなものかと私は思います。記事を書いた記者はCGコードをどこまで理解しているのかなと疑問に思ってしまいます。恐らく実務には精通していないのだと思います。

CGコードで一番問題なのは、原則・補充原則についてコンプライできていないのに「当社はCGコードで定める原則・補充原則の全てをコンプライしています」という表明をしている企業です。このような文言をコーポレートガバナンス報告書で記載している企業はかなり多いのですが、その中には、実際のところはコンプライできていない企業も相当数あると思います。

CGコードの原則・補充原則の中には、コーポレートガバナンス報告書で開示が求められている事項がいくつかあります。これらの事項は開示事項であるため、何らかの理由をあげてコンプライしていますが、一方、開示が求められていない多くの原則・補充原則については、外からは実態が分かりません。

上場企業ですから、積極的に嘘をついているケースは少ないと思いますが、担当者レベルで「解釈の仕方によってはコンプライしていると言えなくもないな」ということで、安易にコンプライと判断しているケースはかなり多いかと想像します。要は開示が求められているところに限定して真面目に考えているということです。実務ではよくある対応かとは思いますが。

従い、個人投資家の方は、投資先企業のコーポレートガバナンス報告書を読んで「当社は全てコンプライしています」という記述があれば、一度企業に問い合わせをして確認して見ると面白いかと思います。勿論、1つずつ質問すると企業も取り合ってくれない可能性も大ですので、開示が求められていない事項の中で重要なものをいくつか取り上げ、「コンプライしているとあるが、どうコンプライしているのか具体的に教えて下さい」ということで質問をするのです。未だにCGコード対応をやっつけ仕事として考えている上場企業も多いかと思いますが、その考えをあらためさせるきっかけになると思います。CGコードにしっかりと対応することが企業の中長期的な企業価値の向上に繋がります。つまり理論株価の向上にプラスになるのです。企業にはCGコードの原則・補充原則を1つずつ真剣に対応して欲しいところです。

では、逆に企業サイドとしてはどうすべきでしょうか?この続きは次回以降にお話しをしたいと思います。