中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

背伸びして東証のプライム市場を選択する必要はあるか?ー 身の丈にあった市場区分の選択を

昨日は書籍を1冊購入しました。仕事帰りに乗換駅である東急池上線五反田駅レミー五反田のブックファーストにかなり高い頻度で立ち寄るのですが、「ステークホルダー資本主義」(著 足達英一郎)という本です。著者は日本総研の常務理事の方です。

本日は、昨日終わらなかった仕事を夕方から着手するとともに(さすがに土曜日の朝からはやる気が起きず)、この本を読むとともに、今年も残すところわずかになってきましたので、保有銘柄のこの1年間と今後の業績予想の整理、1Hの決算説明会資料、アナリストレポートの分析など来年の株式投資に向けた情報整理をする予定です。来週は四季報オンラインのデータが更新されるに先立ち、自分なりの分析というところです。

前置きが長くなりましたが、昨日の日経新聞東証1部のうち146社(現時点において)がプライム市場を選択せずという記事がありました。東証1部2100社のうち、プライム市場の要件を充足していない企業は約3割と言われていましたが、この3割の企業も何らかの施策を東証に提出すればプライムに入れるのですが、あえてスタンダード市場を選んだということです。市場選択は12月末までです。

今回の東証の上場区分において考えるべきは、本年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コード(CGコード)です。CGコードではプライム市場上場会社に限定して適用される補充原則がいくつか新規に規定されました。以下のとおりです。

  • 議決権行使プラットフォームを利用可能とすること
  • 開示書類のうち、必要とされる情報について英文開示を実施すること
  • TCFD又はそれと同等の質と量による開示
  • 社外取締役を3分の1以上選任すること

CGコードは法律と異なり、上記事項を会社は遵守しなければならないというものではありません。コンプライ又はエクスプレインですので、コンプライしないのであれば、その理由を示せばよいのです。とはいうものの、基本的には金融庁(CGコードを実質的に制定しているのは金融庁です)がプライム市場に期待するところであり、今直ぐでないにせよ、プライム市場企業会社は上記を遵守して欲しいというものです。とすると、上にあげた項目をコンプライするとなるとコストがかかるというところが非常に大きな問題です。

TCFDに関していうと、極めて専門的、というか極めてマニアックな分野であるためコンサルを起用して検討を進める必要があるかと思います。監査法人系のコンサルですと、日本の公認会計士資格を持たない傍流の人材(米国公認会計士資格など日本企業の監査が出来ない資格しか保有していない人たちなど)を集めた、コンサル部隊がありますが、こういうところに頼る必要も出てきます。金がかかりますね。

あと大変なのは英文開示です。これは結構大変です。中堅企業であっても英語だけは良く出来るという短大卒や専門学校卒の日本人が結構いるかと思いますが、正直このレベルの方は使えません。何故ならば、開示文書を見るのは海外の機関機関投資家ですので、非常に精度の高い英語表現を心がけることが必須です。社内伝達の英語文章であれば、先ほどの英語の出来る日本人でも全くもって何ら問題ないのですが、海外の機関機関投資家向けの開示文となるとネイティブによる英訳が必須です。でないと開示内容に誤りがあると訴訟が提起されるリスクもゼロではありませんし、そもそも企業の品格が問われます。ここは見落としがちですが、結構というか、かなり大事です。

ということで、プライム市場を選択するということは将来においてコストがかかるということです。流通株式時価総額が100億円以下であればプライムに残っても、近い将来にはTOPIXから外れる可能性もあるので、そうであれば、最初からプライム市場を選択しないという考えもあるかと思います。