前回の第12回で、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)は順守すること(=コンプライ)が必須ではなく、コンプライしない場合には、その理由を説明すること(=エクスプレイン)でもOKなのですが、世の中の多くの上場企業は、何故か「コンプライできないこと=恥」と考えており、開示が要求されていない事項について深く考えずに「全てコンプイしています」と安易に開示している企業がかなり多いであろうという話をしました(業績低迷や株価低迷の方がよっぽど「恥」と企業は考えるべきと、私は、いち個人投資家としては思うのですが・・)。このため、個人投資家は投資先企業にコンプライの実態を株主総会等で確認すると面白いことも話をしました。
では、企業としては何をすべきでしょうか? 私は個人投資家の立場からコーポレートガバナンス・コードを武器として使いこなし、投資先企業の企業価値をいかに向上させるべきかのスタンスでブログを書いていますが、今回は、いつもと異なり投資家から攻められる企業側の立場として、何をなすべきかを説明したいと思います。
答えはシンプルで、物言う株主から指摘を受ける前に、どうコンプライしているのかを開示するのです。そして問題はどう開示するかです。
この点、コーポレートガバナンスガイドラインといった名称でコーポレートガバナンスに対する自社の考えを策定、ホームページで開示している企業が結構多いです。けど、私はこれは不十分かと考えています。何故ならば、このガイドラインですが、各社各様で内容がバラバラで、自社の裁量で独自に記載しているケースが非常に多いのです。構成、項目、記載の順番も各社違うのです。恐らく各社とも自社の事情に照らして、開示しやすい箇所に重きをおいて作成しているのだとは思いますが、投資家から見ると非常に見ずらいです。
では企業はどうすべきかということになりますが、コーポレートガバナンス・コードの対比表の策定・開示が大事かと思います。次に紹介するブリヂストン、大東建託、西松建設のような内容です。
https://www.nishimatsu.co.jp/company/pdf/business.pdf
https://www.kentaku.co.jp/corporate/ir/governance/img/cgc.pdf?20211227
他にも同様の形式のものを作成している企業もそれなりにありますが、これは優れていると私は思います。機関投資家はCGコードへの対応を見るわけですから、各社が独自に作成したガイドラインよりも、CGコードの原則・補充原則に1つずつどう対応しているのかが分かるのが有難いのだと思います。
先日、経済産業省がCGSガイドラインを改訂しました。経済産業省はこれまでにいくつかのコーポレートガバナンスに関するガイドラインを公表していますが、いずれも土台にはCGコードがあります。
企業としては1つ1つの対応を文章にして開示するのは結構大変です。なんとなく曖昧にしてすましていることを文章で明確にして、かつ開示するわけですので、実務がしっかりしていないと開示文章も貧弱になります。
けど、CGコードはコーポレートガバナンスの憲法です。大変ですが、この作業をすることで自社のコーポレートガバナンスの欠点を社内で把握・共有でき、それを強化することで、物言う株主から指摘を受けても対抗できるし、さらには他の機関投資家の賛同も得られることに繋がるように思います。いかがでしょうか?