本日は話題を変えて、法務関連のネタを紹介します。本日の日経新聞に「技術カルテル」摘発との記事がありました。
フォルクスワーゲン、BMW、ダイムラーなど5社が定期的に会合を持ち、有害な排ガスを浄化する法令基準以上の技術があるにもかかわらず、競争の激化を避けるために利用を控えるよう合意したと認めて総額約1,140億円の制裁金を課されたということです。要するに技術カルテルとして処罰されたということです。
カルテルとは、合意によって事業者間の競争を制限する行為をいい、日本では独占禁止法、海外では競争法で規制されています。典型は価格カルテルです。具体的にいいますと、例えば化学材料メーカー5社が存在するとして、この5社が顧客への納入製品の価格について1個あたり10,000円とするといったように価格競争を行わないことを合意することをいいます。市場において事業者は競争をして、需要者・消費者に良い製品・サービスをより安い価格で提供することが求められていますが、カルテルはこれを阻害する行為としてグローバルで厳しく規制されています。
1個10,000円という合意があった以上は、実際にはそれより低い値段で売却した場合でもカルテル認定されることもあります。また、具体的な価格でなくても、顧客に対して「3~5%のレンジで値上げ交渉をしようと」ということを取り決めることでもカルテルと認定されるケースもあります。とりわけ、欧米での規制はかなり厳しいと考えた方がよいでしょう。制裁金が巨額になるケースが多いです。
「当社の製品の納入先は日本国内の顧客であり、海外顧客には販売していないから海外の競争法のリスクはない」と考える企業もいるかと思います。しかし、これは間違いです。国内の顧客に販売した製品について、その後、顧客が自社製品に組み込んで海外で販売した場合には海外の需要者・消費者に影響を及ぼしたとして日本国内でのカルテル行為が欧米の競争法違反として処罰されることもあるのです。
いずれにせよ価格について合意するというのがカルテルの典型でしたが、技術に関する合意も欧州ではカルテルとして罰せられたということです。何故カルテルとして処罰さされたかの法律解釈は不明ですが、市場で支配力のある自動車メーカーの生産台数に影響を及ぼし、価格にも影響を及ぼすというような認定がされたのかも知れません。
ちなみに、カルテルは市場の競争を阻害する行為ですので、先の事例で5社がカルテルをしてもこの5社の市場シェア合計が10%もなく市場に影響がない、つまり顧客は値段が高い場合には容易に他の化学素材メーカーから購入すれば足るという場合には、カルテルとして処罰される可能性は小さくなります。
では、こういうカルテルのリスクがある中で競合他社とアライアンスをする際にはどういう点に注意すればよいでしょうか。次回、解説をいたします。