中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

技術カルテル摘発 ー カルテル違反の疑いを持たれないようにするためには

昨日、技術カルテルの件を書きましたが、では、競合他社とアライアンスを検討する際にはどうしたらよいでしょうか?

まずカルテルの摘発を受けたことのない多くの日本企業は、特に注意を払うことなく、競合会社と会議をしたり、交渉しているのだろうと想像します。少し前にニトリとホームセンターの経営統合があった時に「過去に面談を重ね」というような発言がたしかあったように思いますが、恐らく、カルテルの疑いが持たれるリスクなどはあまり気に留めていないのかも知れません。最終的に買収となったので、交渉の途中で商品価格の話をしていたとしても、今となっては何ら問題はないですが。

カルテルの疑いをもたれることを避けたいのであれば、会議や交渉の場には、都度外部の法律事務所の弁護士を同席させ、かつ会議・交渉の議事録を弁護士に作らせることがお薦めです。この弁護士は中立の立場の法律事務所がよいと思います。特に何かアドバイスを求めるわけではないのですが、さすがに「僕は労働法しか知らない」「交通事故案件が専門」という素人の弁護士だと困りますので、ある程度は独占禁止法に精通している人が必要かと思います。

「そんなことする必要あるの?」と思われることがあるかも知れませんが、海外の企業はカルテルの意識が高いので、競合会社との交渉では法律事務所を同席させることは多いと思います。ただし、かといってあまり過敏になる必要はないと思います。

一度カルテルの摘発を受けた企業は、過度にカルテルのリスクに神経質になる傾向があるということを数年前にある法律雑誌の企業アンケートで読んだことがあります。こういう企業は、コンプライアンス強化のお題目の下、ビジネスを知らない法務部やコンプライアンス部門のスタッフが無駄に厳しいコンプライアンス・ルールを作ることが多いのだろうと想像します。特に、起用している外部の法律事務所に相談すると彼らは決まって「リスクあります」というのが常ですので(自分たちが責任を問われないようにするため)、それを社内の法務部あたりが、伝書鳩のようにそのまま経営陣に伝達して、過剰なルールを作成することになるのだと思いますが、そこまで気にするのはどうかと思います。所詮は、いち民間企業のことをカルテル摘発が済んだ後も当局がずっと気にすることは普通は考えにくいです。

ということで、カルテルに過剰に敏感になる必要はないですが、海外企業がよく行っているように会議・交渉の場には、面倒ですが、リスク回避の観点から独占禁止法・競争法をある程度理解している弁護士を同席させるという習慣はつけた方がよいかと思います。そうすれば、後日、当局から何か求めがあった場合でも議事録を証拠として使えるかと思います。