中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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東芝機械が中計経営計画の修正を公表-この意味するところ

村上ファンド東芝機械の攻防が続いていますが、2月4日に東芝機械が2019年5月15日公表済の中計経営計画の見直しを公表しました。昨日の日本経済新聞でも掲載されていましたが、この修正した中期経営計画のポイントをあげますと、次のような内容です。

  • 2023年度目標値は売上高1,350億円、営業利益 108億円、営業利益率 8.0%、ROE8.5%(5月15日公表の当初の中期経営計画では、2023年度の営業利益は95億円予想)
  • 設備投資・人的投資、M&Aで300億円の投資を実行し、150億円を株主に還元し、配当性向40%を実現
  •  希望退職施策を実施し19億円削減、削減人員は200名~300名程度(東芝機械の2019年3月末時点の連結人員3,346名)などです

今の東芝機械の状況ですが、村上ファンドが株式公開買付(TOB)をしており、東芝機械は、東芝機械の株主がこのTOBに応募するのを食い止める必要があります。そのためには、株主に東芝機械の株式を保有継続させるというインセンティブを与える必要があり、それがこの中期経営計画の修正です。

この見直しにより、機関投資家はこの数値の実現可能性を分析して、DCF法等によって理論株価のバリュエーションを行うことをすると思います。

その結果、村上ファンドの提示しているTOB価格より、保有を継続した方が得、つまり、村上ファンドTOBに応じることで得られるキャピタルゲインより、将来株価がさらに上昇してその局面で売却した方がキャピタルゲインが高いという期待が持てれば保有するということです。配当性向40%を目指すというのですから、これも考慮することになります。

 今後は、この東芝機械の中計経営計画の実現可能性を投資家は検証することになります。そして、アセットオーナーにも村上ファンドTOBに応じるのか、それとも東芝機械の株式の保有を継続するのか説明する必要があると思います。

東芝機械は、修正中期経営計画の説明会を近いうちに開催するのかも知れません。ただ、そうなるとその場に村上ファンドの関係者が参加する可能性もありますので、微妙かも知れません。

また、2月5日には、東芝機械が村上ファンドより、東芝機械の質問に対する回答があった旨の開示がされていました。

ところで、リストラをしてまで株主還元を優先する東芝機械の一般従業員はどういう気持ちなのでしょうか。いくら魅力的な中期経営計画を掲げても、その達成手段がリストラとなると(結果、営業利益が増加)従業員の会社離れが起きる気がします。