本日は上場企業と機関投資家との対話(エンゲージメント)について書いてみたいと思います。
昨年の12月から本年1月、2月にかけて機関投資家とのエンゲージメントを行う上場企業も多いかと思います。決算発表後にIR部門が個別機関投資家とスモールミーティングをすることは多いと思いますが、エンゲージメントは企業との決算の対話とは大きく異なります。四半期決算や年度決算の対話をするのではなく、企業の強み・弱み、事業戦略、コーポレートガバナンスなど多岐に亘る事項について対話をすることがエンゲージメントになります。
では、エンゲージメントの目的は何でしょうか?
大きくは、中長期的な目線の投資家に自社を理解して貰うことと、株主資本コストを下げることにあるように思えます。中長期的な投資の観点からは、短期間での企業業績だけでなく、企業の持つ本来の力、コーポレートガバナンス等を対話で確認して機関投資家に理解して貰うことになります。
もう1つは、株主資本コストの低減ですが、株主資本コストとは、株主が投資先企業に要求するリターンですが、これはハイリスク・ハイリターンです。つまり企業の将来キャッシュフローのブレの予見可能性が低い場合には、投資家は高いリターンを求めるということです。つまり要求するROEが高くなるということです。
これを下げるには、企業の①成長性、②収益性、③予見可能性の向上、④経営力について投資家に理解いただく必要があります(これは金融庁のフォローアップ会議の委員である、フィデリティ投信の三瓶氏がある書籍で言っていました)。株主資本コストはCAPMで算出されますが、実は機関投資家によって考えるコストは色々あります。そのため、企業はエンゲージメントを行うことで株主資本コストの低減に取り組むことになります。
ただ、これは私の個人的な意見ですが、投資家サイドもエンゲージメントにまだ慣れておらず、企業との1時間の面談で質の高い討議の出来る機関投資家はまだそれほど多くはないように思います。
特にパッシブ運用が中心の投資家は、決算数値以外の個々の企業を深く分析することにあまりなれていないように思えます。決算数値に関する決算説明会やスモールミーティングでの対話は投資家・上場企業サイドともに十分に慣れていますが、非財務情報のエンゲージメントは、まだまだ互いに手探りのような印象を持ちます。
いずれにせよ、何を対話すべきか悩むよりも、実質株主判明調査で明確になった9月末現在の株主に電話・メールによる面談のアポを入れて、まずは対話を開始して見ることが大切だと思います