中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

個人投資家が投資先企業に提案をするためのROEの実践的な使い方①

2月はかなり多忙で、在宅勤務がほぼ出来ないのですが、明日はなんとか時間をとり、午後は東京ビックサイトで開催される国際ナノテクノロジー総合展・技術会議に参加します。

nano tech 2023 新しい社会変革を牽引するナノテクノロジー Social Transformation through Nanotechnology

私の投資先銘柄が出展しており、技術の方の声を聞くのはこういう場しかないので、技術の方に質問をして生の話を聞くのと、周辺情報を仕入れるため、はじめて参加します。完全にプライベートですので、午後休みを取得しての参加です。結構楽しみにしています。

さて、本日はROEを切り口に、個人投資家の方が投資先企業に質問をしたり、建設的な質問や提案をする際の実践について説明をしたいと思います。

まず、最初に投資先企業のROEが高いか低いかを見ます。いくらであれば高いと言えるでしょうか? ROEは10%以上ないと駄目でしょうか、それとも8%以上であれば足るのでしょうか?

伊藤レポートでは企業のROEは8%必要といっているので、8%が必須と思う方も多いかと思います。けど、これは正しくありません。ROEの数値が妥当かどうかは、その企業の株主資本コストと比べる必要があります。株主資本コストとは、株主がその企業に投資するに当たって期待するリターンです。このリターンと比較するのがROEになるわけです。株主資本コストをROEが上回っていれば及第点がつきますが、下回っている場合には落第点がつくということです。

株主資本コストが何パーセントになるかは企業に聞きましょう。2018年に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは企業は資本コストを認識することが求められているわけですから、コーポレートガバナンス・コードをコンプライしてる圧倒的多数の企業は、当然株主資本コストを認識しているはずです。

ブルームバーグ等でも調べることが出来ますが、有料だし、ベータ値をどうみるかで数値は異なるので、投資先企業のIR部門に「当社の株主資本コストは何パーセントと認識しているのか教えて下さい」と質問するのが一番早いです。是非、聞いてみて下さい。

この結果、仮に、ROEが株主資本コストを下回っていたとします。分かりやすく数値をあげますと、ROEが3%で株主資本コストが7%といった具合です。完全に落第点の企業ですね。ここで次のステップに移行します。

ROEが低いので「これを向上させよ」「最低でも7%にせよ」というわけです。とは言え、漫然と言っても駄目です。ROEを分解して、分解した各要素について指摘をしていくのです。ROEを分解すると「ROE=売上高利益率×総資産回転率×財務レバレッジ」です。この中で売上高利益率と財務レバレッジがポイントになります。続きは次回にしたいと思います。