コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

アクティビスト(物言う株主)に狙われる中堅上場企業

昨日の日本経済新聞で、企業向けIRを支援するアイ・アールジャパン(東証1部)が、会社が物言う株主に狙われ易いかどうかをAIを使って分析するサービスを開始したとの記事がありました。

アイ・アールジャパンは、過去10年間に大量保有報告書に登場したアクティビストの動き約100件をまとめ、AIで傾向を分析したようです。記事によれば、アクティビストの主な注目点として次のことが掲載されています。

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アクティビストの主な注目点(アイ・アールジャパン調べ)

大企業(時価総額5,000億円以上)
株式投資における収益性の低さ(過去10年)
ROEの低さ(過去5年や最新)
・外国人の株式保有比率の高さ

中小企業(時価総額100億円~1000億円未満)
・取締役会の社外取締役比率の低さ
時価総額に比べた現金・有価証券の高さ
・株価の低さ(PERの低さ)
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ここで今回注目したいのは、中小企業(上場企業)についてです。

中小企業というと日本企業の圧倒的大多数を占める未上場の企業を普通は示すので、記事では「中小企業」とされていますが、一応上場企業ですので、以下、中堅企業といいます。

さて、中堅企業の場合には、社外取締役の低さといったガバナンスリスクが狙われるポイントとして掲げられています。

社外取締役については、現在検討中の会社法改正案でもその設置の義務化の要否が議論されていますが、金融庁で議論されているSSコード及びCGコードのフォローアップ会議でも社外取締役の資質が討議されています。また、現金の活用、政策保有株式の縮減もフォローアップ会議でのホットな話題であります。

中堅企業では最近のコーポレートガバナンス改革の動きを十分に把握されていない企業も多く、そもそも時価総額も小さいことから機関投資家との対話などをしている企業も多くないと思います。

このため、資本市場の動向に精通しておらず、後になって法的に義務付られた最低限のガバナンス対応しか出来ないことが多いかと思います。このため、業績・株価パフォーマンス面、株主還元の面から課題がある企業は、物言う株主からガバナンス面の課題も併せてつつかれるリスクがあるということになります。

誤解ないようにいいますと、業績も好調、十分な株主還元をしている、株価も高いという中堅企業であれば、社外取締役といったガバナンスリスクを気にする必要はありません。ガバナンスリスクは財務面・事業面で課題がある場合にそれを後押しする材料となります。

ただし、業績パフォーマンス、株価は当然ながら変動するものですから、将来、財務面での課題が発生した時にガバナンスリスクをつつかれないようにするという観点からは、平時においてもガバナンス面の課題をクリアにしておく必要があると思います。

コーポレートガバナンスというと、中堅企業では「コーポレートガバナンスなんて企業の業績には関係ないので、法令に反しない程度で必要最低限のことをやっておけばよい」と考えることも多いと思います。中堅企業では、人的リソースも限られており、特にスタッフ部門に割けるリソースもさらに限定されると思います。

しかし、リスクを出来るだけ減らしておくという観点からは、資本市場の動きはウォッチして、常に先行して取り組んでいく、または、取り組まないまでも何が資本市場でホットな話題になっているかは上場企業であれば、常にウォッチしておく必要があります。


そうしないと、3月期決算企業は株主総会も近づく中、3月末の株主名簿を締め、実質株主の判明調査をしたところ物言う株主が株式を1~4%程度保有していたことが判明し、バタバタした対応に追われる可能性も出てきます。

先日、伊藤レポート2.0を書いた、一橋大学の伊藤邦雄教授の講演会に参加しましたが、その中で、「本年はアクティビスト元年になる」ということを言っておられました。

アクティビスト元年とは、以前にも新聞報道で見たこともあり目新しい言葉ではありませんが、国をあげて進めているガバンナンス改革がアクティビストの後押しにもなっているとの報道も散見されますので、上場企業は今一度、自社のガバナンスが資本市場の動きから課題はないかを見直す必要があると思います。