「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が開催されており、2月15日に第14回会議が開催されました。
ここ数回の議論では、本年の株主総会シーズンまでに投資家と企業との対話ガイドラインを策定すること、コーポレートガバナンス・コードの見直しの検討が行われていますが、第14回会議では、対話のガイドライン案が提示されております。
金融庁のHPにガイドライン案が掲載されていますが、上場企業各社の関心の高い政策保有株式に限定して、ガイドライン案を要約しますと次のような内容になります。
<投資家と企業との対話ガイドライン案>
1.政策保有株式の適否の検証
・ 保有目的がステークホルダーに理解できるよう分かりやすい説明
・ 保有に伴う便益が資本に見合っているか具体的勘案の上、取締役会での意思決定
・ 政策保有株式に係る議決権の行使についての適切な基準の策定
・ この 基準に基づく適切な議決権行使
・ 方針の開示において、政策保有株式の縮減に係る方針・考え方の明確化 など
2.政策保有株主との関係
・ 売却申入れをした場合、取引縮減を示唆する等の売却を妨げられることの有無
・ 取引の経済合理性の十分な検証ないまま取引の継続の有無
ガイドライン案によれば、上記内容が今後の機関投資家と企業との対話のポイントになり、つまり投資家はこのような内容について企業に意見を求めていくということ、これらを反映したコーポレートガバナンス・コードの改訂を検討するということです。
勿論、これは第14回会議で事務局が提出したガイドライン案であり、これをベースに第14回会議でどのような討議がなされたかは分かりません(会議の議事録は金融庁のHPに必ず掲載されるのですが、このブログ掲載時点ではまだ掲載されてはいません)。
しかし、大きく方向性は変わることはないと思いますので、上場企業の実務担当者は政策保有について今後実務対応をどうするか関心を払う必要があるようです。
ところで、おさらいになりますが、政策保有株式の問題のポイントですが、大きく次の点になります。
1.企業に対するエクイティガバナンスを効かせることができない
政策保有株主が安定株主として存在するため、少数株主の意見を投資先企業の経営に反映させることができないということです。つまり政策保有株主が「企業を守る岩盤」となってしまっており、投資先企業の経営陣を交替させたいと少数株主が提案してもこの提案を通すことができず、結局、エクイティガバナンスを効かせることが出来ないということです。
2.資産効率の悪化によるROEの低下
政策保有株式を潤沢に持つということはバランスシートの資産が膨らむということになります。とすると、資産効率が悪化します。ROEは分解すると、当期純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジであるところ、資産が重くなることで総資産回転率が悪化し、ROEの低下の要因になります。
3.配当性向の向上の制限
政策保有株式を解消して売却すれば現金になります。そうすると、この現金を成長に必要な設備投資やM&A投資に使い、残りを配当として株主に還元できます。一方、政策保有株式として保有していると株主は還元を受けられません。
以上が大きなポイントになります。
しかし、上場企業は日本で約3700社程度あると思いますが、こういった政策保有株式の話をしてもピンと来ない企業が圧倒的に多いのが現実と思います。上場しているものの、時価総額が数十億円から数百億円程度の企業は(非常に多いと思います)、アナリストがカバーしておらず(アナリストレポートが発行されていない企業ということ)、当然にアナリスト説明会も開いておらず、上場はしているものの、資本市場との対話などとは縁のない企業です。
先日のブログで書いた、教育関連企業、今のところ学習塾の上場企業の数社の財務分析しか出来ていませんが、教育産業業界は中小型銘柄しかありませんので、この規模の企業は、「コーポレートガバナンス改革って何?」の意識しかない企業も多いのではないかと想像します。
そのため、物言う株主が本気になって攻めていけば、教育関連銘柄企業などはいくらでも突っ込まれどころの「宝の山」がある業界の気もいたします(推測です)。
以上が政策保有株式の議論ですが、今後、金融庁は、コーポレートガバンス・コードの見直しに入ると思いますので、またブログでアップデートして行きたいと思います。