来週の6月29日頃が株主総会の集中日かと思いますが、今年は株主提案が非常に多いですね。しかも、株主提案が可決されるケースも出てきました。間もなく改訂される経済産業省のコーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針では、投資家を社外取締役に招聘することの有用性も盛り込まれました。
来年以降も株主提案は益々増え、機関投資家のみならず、個人投資家も「物言う株主」になる可能性もあり、そもそも日本の株式市場の活性化のためには、そうなるべきと強く思います。ほとんどの個人投資家は、1銘柄当たり数百株から、多くても1000株~2000株程度しか保有しておらず、株を購入後は株価が上がるのを神頼みするのみという弱者です。
機関投資家と異なり、経営トップとIR面談をする機会もなく、せいぜい工場見学会やIR部門の担当役員クラス程度による個人投資家説明会に参加するくらいです。神頼みをしても株価が上がらないとヤフーファイナンスあたりで愚痴っていても仕方ありません。サラリーマンが同僚との酒の席で、上司の悪口を言っても何も変わらないのと同じです。
考えたことや思いは、個人投資家も企業に働きかける時代になってきているのだと思います。けど働きかけるには、知識・知恵を付ける必要があります。では、個人投資家は何をすべきでしょうか?
企業の決算短信・決算説明会資料を分析して、企業のIR部門に電話やメールで問い合わせることが1つ重要ですが、これに加えて、じっくりと勉強すべきはコーポレートガバナンス・コードです。これは金融庁が2015年に策定し、有識者が集まり、かなりの時間をかけて議論をして、2018年、2021年に改訂しています。
アクティビストの企業への提案のほとんどはコーポレートガバナンス・コードで金融庁が企業に求めていることと方向性があっています。また、この提案に賛同する機関投資家もコードを参考にしています。個人投資家であっても、このコードの要請に沿った提案であれば合理性があると言えるわけです。企業も完全に無視することは出来ないと思います。
企業のIR部門に問い合わせる際に単なる業績見通しの話だけすると、個人株主は軽くあしらわれることが圧倒的に多いですが(保有株数にもよりますが)、このコーポレートガバナンス・コードを武器にした質問は結構ビビらせる効果もあったりします。
というのも、IR部門はコーポレートガバナンス・コードを理解していないことが多く、個人投資家がここを突いてくると身構えます。物事は先手必勝が大事ですから、「この株主は結構勉強しているな。結構やっかいかも」という印象を持たせると、その後、業績や今後の見通しなどの質問を継続する上でも重要かと思います。つまり、個人株主ということで舐められようにするという効果があります。
ということで、本年の株主総会も終わりに近づいていますが、2023年の株主総会に向けて投資先企業を分析するに当たって、コーポレートガバナンス・コードをしっかりと理解して、その上で投資先企業やその競合企業のコーポレートガバナンス報告書や有価証券報告書を読み込むとよいかと思います。
ブログでも過去5回、コーポレートガバナンス・コードの読み方を掲載してきましたが、その後、仕事が多忙であったりして掲載が止まっていましたが、そろそも第6回から連載を再開したいと思います(直近の第5回の記事を再掲いたします)。