コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

スチュワードシップ・コードとは?

2017年5月29日に金融庁からスチュワードシップ・コードの改訂版が出ました。

2014年2月に金融庁がスチュワードシップ・コードを制定して3年後に改訂を行うということで、今回改訂版が出たことになります。

スチュワードシップという言葉はここ数年新聞等でよく出てきますので、目にする方も大変多いと思います。ではスチュワードシップ・コードとは何でしょうか?

スチューワードシップ・コードとは上場企業に投資をする機関投資家に対する行動規範を纏めたもので、具体的には、機関投資家はアセットオーナーから金を預かり、それを上場企業に投資して運用していますが、投資しっぱなしではなく、積極的に企業サイドと対話をして投資先企業の中長期的成長を支え、ひいては、アセットオーナーの利益を図るようにしなさいというものです。

今回の改訂の大きなポイントは次のとおりです。
①運用機関のガバナンス強化
②パッシブ運用における企業との対話の充実
機関投資家の議決権の個別開示の充実

①は、運用機関は大手の金融機関のグループ会社であるケースも多いのですが、その場合、親会社である金融機関と企業との関係を考慮して(借入先金融機関は企業の安定株主となります)、株主総会の議決権行使に当たって会社提案になんでも賛成するのではなく、機関投資家のアセットオーナーの利益を考えて、適切な議決権行使をするよう機関投資家のガバナンス体制を強化すべきというものです。要は企業との馴れ合いを防止するということです。

②は、機関投資家はパッシブ運用においても企業との対話をきちんと行うようにしないというものです。パッシブ運用とは、株価指数に連動させて投資を行う運用です。反対言葉にアクティブ運用があります。

③は以前にブログでも何度か書いていますが、議決権の行使結果を個別企業毎に開示しなさいというものです。

最近、3月期決算企業の株主総会が近づいていることもあり、機関投資家の議決権の個別開示の記事がかなりの頻度で新聞に掲載されていると思います。本日の日経新聞でも三菱UFJ信託銀行の個別開示の記事が出ていました。

スチュワードシップ・コードは投資サイドである機関投資家に要求されるものですが、結局は発行体である企業と対話する必要があるのですから、企業としても積極的な対話が求められることになります。

積極的な対話を行うことで自社を良く理解してもらい、これが場合によっては株価の向上につながりますし(ただし、株価の変動はあくまでも基本は業績です)、また、最近話題のアクティビストが会社に提案をした時に、その内容が株主の利益を毀損するものである場合には会社がそれを説明して、会社側に立つ味方の株主を増やすという観点からも非常に大事になってきます。

資本市場との対話を行う部署としては、多くの上場企業ではIR部門がありますが、IR部門の主たる業務は、アナリストを対象にしての決算説明が中心になります。今後はIR活動において、従来の数値説明に加えて、より幅広い企業全体の情報を提供することが求められるように思われます。

つまり製品やサービスを顧客に説明して購入して貰うのと同様に自社をアピールして投資家に理解してもらうという一種の宣伝・PRを行う業務が今後は益々重要になってくると思われます。