中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

真摯な買収提案とは?経産省の事務局説明資料が参考になります

今週の仕事も残すところ明日一日です。私は明日は在宅勤務です。来週からかなり多忙なり、この先1ヵ月は在宅勤務が難しいので、明日は新聞記事はじめ諸々の情報のインプットなどに時間を費やし、自宅でゆるりと過ごす予定です。他に、投資ファンドのストラテジック・キャピタルが公表している株主提案の資料も、自分の投資先企業に何かを提案する際の参考になるかと思いますので、じっくり読み込む予定です。

シティインデックスイレブンスに対してコスモエネルギーHD(以下「コスモ」)が買収防衛策を導入しましたが、1月17日にコスモが次のとおり書簡を公表しています。

https://ceh.cosmo-oil.co.jp/press/p_230117/pdf/230117jp_02.pdf

コスモは、企業価値向上策についてシティに真摯に説明を試みたことなどが2ページ目に記載されています。丁寧にアンダーラインが付してあります。シティの姿勢を批判するような内容が記載されていますね。まあ本当のところは当事者以外には分かりませんが、コスモとしてはシティが真摯でない買収者であるということを強調したいのだと想像します。

真摯な買収かどうかは、買収防衛策に基づく対抗措置の発動の妥当性を判断する上で重要なポイントの1つになります。真摯な買収者でなければ、対抗措置の発動が肯定される方向に向かうように思います。真摯な買収者については、経産省の「公正な買収の在り方の検討会」の第3回会議の事務局資料の11ページに「真摯な買収提案」に該当しない場合として、次の事項があげられています。

  1. 具体性が合理的に疑われる場合 - 買収対価や取引の主要条件を具体的に明示することなく行われる買収提案
  2. 実現可能性が合理的に疑われる場合  - ①買収資金の裏付けのない買収提案 ②支配株主が保有する支配的持分を第三者に売却する意思が乏しい中における支配的持分の買収提案 ③法令等上必要とされる当局の許認可が得られる可能性が低い買収提案 ④買収実施の前提条件の充足可能性が低い買収提案
  3. 真摯性が合理的に疑われる場合 - ①企業価値を向上させる具体的な経営方針(会社の事業全体の方針や、従業員等の処遇に関する方針も含まれうる)が示されずに行われる買収提案 ②買収価格を吊り上げる目的で行われる買収提案 ③競合他社により情報収集等を行う目的で行われる買収提案

この中で「①企業価値を向上させる具体的な経営方針(会社の事業全体の方針や、従業員等の処遇に関する方針も含まれうる)が示されずに行われる買収提案」というのが1つのキーですね。

真摯な買収提案でなければ、対抗措置発動を株主総会で付議した場合、議決権行使助言会社の賛成推奨が得られる可能性が高まるほか、対抗措置を発動して裁判になった場合でも、会社側の対抗措置を有効と判断される材料になるのかなと思います。これまでの裁判例をつぶさに調べたわけではないので、正確性に欠けるところがあるかも知れませんが、この考え方で大きくは外れてはいないかと。今回のシティとの件でコスモの今後の動きも注視して行きたいと思います。