中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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GMOインターネットが買収防衛策のスキームを変更 ー 導入企業は今後スキームの見直しが必要かも知れません

3月期決算企業の1Q決算発表が来週から本格化します。私の場合、四半期決算発表の都度、投資先企業の決算短信と説明会資料を見て、IR部門に中期経営計画の進捗や期末の決算説明会動画での経営トップの発言の進捗を細かく質問をしているのですが、今週から情報を整理して、週末に質問の下準備をする予定です。

さて、本日の日経新聞にも記事がありましたが、GMOインターネットが事前警告型の買収防衛策のスキームの一部変更をするようです。次のとおりプレスリリースが公表されています。

https://ir.gmo.jp/pdf/irlibrary/gmo_disclose_info20220719_01.pdf

GMOの事前警告型は株主総会ではなく、取締役会の決議のみで継続更新するのですね。少し前に買収防衛策を廃止したエーザイと同じタイプですね。事前警告型では珍しいタイプです。

今回どこを変更したのかというと、取締役会が一定の場合には、対抗措置の発動の是非について株主の意思を確認するための株主総会を招集し、株主ご意思を確認することができることを明記したようです。変更前後の対比表がないので、どこかどう変わったのかは細かくは良く分かりませんが、GMOのスキームでは、大規模買付者が大規模買付ルールを遵守しない場合には、次のとおり記載されています。太字は私がハイライトしました。

①取締役会の判断により対抗措置を発動する場合
大規模買付者が大規模買付ルールを遵守しない場合、具体的な買付方法の如何にかかわらず、当社取締役会は、当社株主の皆様の共同の利益及び当社の企業価値を守ることを目的として、会社法その他の法令及び当社定款が取締役会の権限として認める措置(以下、「対抗措置」といいます。)を講じ、大規模買付行為に対抗することがあります。対抗措置は原則として、新株予約権の無償割当てによるものとしますが、その時点で相当と認められるものを選択することになります。なお、具体的な対抗措置として新株予約権の無償割当てを行う場合の新株予約権の概要は、別紙3記載のとおりとします。新株予約権の無償割当てを行う場合には、新株予約権に、対抗措置としての効果を勘案した行使期間及び行使条件(大規模買付者を含む特定グループは当該新株予約権を行使できないものとする等)を設けることがあります。
②株主意思確認株主総会の決議に基づき対抗措置を発動する場合
上記①の場合のほか、当社取締役会は、(a)大規模買付者が大規模買付ルールを遵守しない場合であっても、対抗措置の発動の是非について株主の皆様のご意思を確認するための株主総会(以下、「株主意思確認株主総会」といいます。)を招集し、対抗措置の発動の是非について株主の皆様のご意思を確認することが適切であると当社取締役会が判断した場合、又は、(b)下記4.(2)に定める当社取締役会からの諮問に対して特別委員会が株主意思確認株主総会を招集することを勧告した場合には、株主意思確認株主総会を招集し、対抗措置の発動の是非に関するご判断を株主の皆様に行っていただくことができるものとします。 

このあたりが今回の変更箇所でしょうか? この1年間の有事型の買収防衛策の裁判例から、対抗措置の発動においては株主総会で株主の賛同を得るのがポイントになっています。GMOもこれらの判例を踏まて、株主総会に諮ることをスキームに織り込んだのかも知れません。

来年、買収防衛策の更新期限を迎える企業は、夏休み明け頃から社内検討を開始することになるのだと思います。事前警告型に対する機関投資家の判断は、厳しい状況が続くとは思いますが、株主総会過半数の賛同が得られる限り継続更新したいという企業も多いかと思います。

この10年間は事前警告型のスキームの大きな変更は必要ありませんでした。理由は簡単で裁判例がなかったからです。けど、この1年間で大きく状況は変わりました。来年更新期限を迎える企業はこの1年間の裁判例を踏まえて、スキームの見直しが必要になるかも知れません。