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議決権不適切集計が連日報道 ー アクティビストの指摘が企業統治を改善

連日大きく報道されていますが、三井住友信託銀行株主総会の議決権行使の集計について不適切であった結果を昨日公表し、1,000社で誤りがあり、過去20年間続いていたということです。

本日の日経新聞1面では、みずほ信託銀行も不適切な集計があったことが掲載されています。議決権の集計事務において、三井住友信託のグループ会社である日本株主データサービスに委託しており、この会社が集計作業を誤っていたので、みずほ信託も不適切な集計をしていたということです。

先日のブログでも記載しましたが、決議取り消しの訴えを不適切集計のあった企業の株主が提起しようとしても、行使期限が切れているほか、そもそも軽微な瑕疵として裁判所により裁量棄却されますので、株主は法的な対応を求めることは出来ません。1990年代後半頃であれば、総会屋が大騒ぎをする事件ですが、現在は総会屋はいませんので、結果として、本件報道を受けて企業としては大きく慌てる必要はないと思います。ただし、総会の議決権行使結果は臨時報告書で開示しているので、その数値に誤差があったということで何らかの対応は必要かも知れませんが、大問題というものではないかと思います。

法的な知識が乏しい総務担当役員などは、今回の問題を受けて「大変だ」「顧問弁護士に相談しなければ」ということで大慌てするのも必ずいるかと思いますが、このあたりの本質をきっちりと理解しておく必要があります。

この問題の背景は、6月末に総会が集中するため、事務処理が膨大なことにありますので、問題の解決として今後は総会の電子化や総会の分散が進むように思います。分散が進むとこれまで以上に多くの株主が総会に出席することになるので、企業は十分な総会対策をする必要が出てきます。

この問題は東芝の株主であるアクティビストが指摘したことが契機になっています。先日、経産省が公表した事業再編に関する実務指針においても、「企業はアクティビストの提案や指摘を真摯に受け止めるべき」ということが明記されています。今回の企業統治の根幹を揺るがしかねない問題はアクティビストが指摘したことが契機となっており今後、アクティビストを肯定する流れが益々強まるかも知れません。アクティビストが今回指摘をしなかったら、この不適切な集計が今後も続いたのでしょうが、それをアクティビストが止めたということです。

企業はアクティビスト対策(敵対的買収対策ではありません)を真剣に考える必要があるかも知れません。