中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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取締役会議長を社外取締役にする意義

2月17日の日本経済新聞で、日産自動車が設置する企業統治改革の専門委員会は、日産自動車の取締役会議長を社外取締役が務めることを提言する方向で調整に入ったとの記事がありました。

今回は、社外取締役を取締役会議長にすることの意義について触れたいと思います。

まず社外取締役の比率についてですが、社外取締役が3分の1以上いる企業の割合は、東証1部で33.6%、JPX日経400で40.6%となっています。次に取締役会議長を社外取締役を務める企業ですが、これは少ないです。正確な数値はたしか商事法務研究会の雑誌か何かに掲載されていました。

では、社外取締役のような非業務執行者を議長にする動きやその狙いはどこにあるので
しょうか?

これは、経産省が2018年9月28日に改訂したコーポレートガバナンス・システム
に関する実務指針(CGSガイドライン)に明確に記載されています。同ガイドライン17ページの「2.5.1取締役会議長」において、「取締役会の監督機能を重視する場合には、社外取締役などの非業務執行取締役が議長を務めることを検討すべき」とあります。

この理由は次のとおりです。
・CEOは業務執行に関する説明を行う役割に徹する方が、取締役会の監督機能の実効性を確保し易い
・議長には取締役会を自由闊達で建設的な議論・意見交換の場とする、審議を活性化することが求められており、監督側が議長を務めた方が、監督側が議論や問題提起をしやすい雰囲気を作ることが実現されやすくなる

取締役会は業務執行の意思決定機関ですので、そこを仕切る議長は業務執行に精通しているCEOなり社内取締役であるべきという意見が多くの上場企業かと思います。しかし、コーポレートガバナンス改革では、取締役会は、CEOが業務執行を行う上での大きな戦略の策定と監督機能の充実の役割の2点がその役割と言われています。

戦略策定という点においては、短期での目線に囚われがちなCEOや社内取締役よりも社外取締役の方が適切といえます(社内者は会社法上任期が1年~2年であるので短期の目線で物事を考えるのは当然と言えば当然ですが)。中長期な企業価値向上の観点から、社外取締役が議長になり、中長期の戦略を策定すべしということかと思います。

なお、日産自動車社外取締役には井原氏という元女性レーサーという人もいるようです。社外取締役の役割は機関投資家とのエンゲージメントで必ず聞かれるところですが、この方の役割について、どのような説明をしているのか個人的には関心があります。

ちなみに、2018年6月4日の日産自動車株主総会招集通知に井原氏の選任理由が次のとおり記載されています。

井原慶子氏を社外取締役候補者とした理由は、同氏は、国際的な女性レーシングドラ
イバーとして様々な国際的レースで活躍されるとともに、モータースポーツを通じ、深く自動車産業の発展や人材育成に関わってきました。また、官公庁や自治体の審議会委員や政策アドバイザーとして、教育や環境、将来のモビリティなど、様々な分野での提言や活動を、女性ならではの視点から行ってきております。こうした同氏の知見は、当社の経営にとっては極めて有益であり、また、当社の成長に繋がるものと判断し、社外取締役として選任をお願いするものであります。なお、同氏は、過去に社外取締役又は
社外監査役となること以外の方法で会社経営に関与されたことはありませんが、上記の理由により、社外取締役としての職務を適切に遂行していただけるものと判断しております。」

「女性ならではの視点」というものがあり、それが経営に有益であり、また、会社の成長に繋がるということのようです。