旬刊商事法務の9月5日号に、スチュワードシップ研究会理代表理事の木村祐基 氏という方が改訂CGコードを受けて、国内機関投資家約20数名にヒアリングを行い、機関投資家の関心の高い項目について説明した記事がありました。
ネットで検索すると、木村氏は、野村総研、企業年金連合会、金融庁総務企画局企業開示課なので勤務経験がある方のようです。
上場企業は年末から年明けにかけて機関投資家を訪問しての対話を開始することになると思いますが、今後の対話に向けて機関投資家の関心が分かる興味のある記事でしたので紹介します。
記事によれば、ヒアリングを受けた機関投資家が関心あるテーマは、次のとおりとのことです(以下は記事の内容を私がサマリーしたものですので、原文とは異なります)。
<ヒアリングでの投資家の主な意見>
◎資本コスト
・経営陣が理解しておく必要あり。資本コストの数値は変動するが、算出根拠となる前提条件や方法を理解すること
・中期経営計画策定や新規投資で資本コストの考えが入ることになるが、資本コストの数値自体が絶対ではなく判断要素の1つとして検討
◎政策保有株式
・保有銘柄は最小限であるべき。そもそも戦略的提携、資本提携の相手は数社である(前提として単なる取引目的の保有はNG)
・今後のエンゲージメントでは政策保有の保有検証が大きな関心事項であり保有するのであれば詳細説明求める
◎CEOの後継者計画
・計画内容は取締役会全体で社外取を含めて検証すべき。原案はCEOが作成してよいが、内容は取締役会又は指名委員会での審議が重要
・計画内容は広く開示することを望むが、開示しない場合、対話において説明すべき
◎CEOの解任
・解任ケースは、①企業不祥事、②長期に亘る業績低迷・経営指標の未達成③株主還元軽視等の継続
・企業不祥事の内容は、東証が出している「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」で第三者委員会を設置する場合の例としてあげらている要件が1つの参考になる
◎取締役会の多様性
・女性や外人は必須でない。出身背景の多様性の担保が肝要
私が機関投資家が関心を持つであろうと考えていた事項とおおむね同じでした。
特に株主資本コストの詳細な数値は、機関投資家によって異なるので数値が重要というより、数値の算定の考えをきちんと経営陣が理解すべきという点はそのとおりであろうと思います。
前回、改訂CGコードを受けての個人投資家目線からの政策保有株式の議決権行使について記載しましたが、引き続き、上のような事項に焦点を当てて、来週に少しずつ掲載していきたいと思います。