中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

GPIFがESG投資の年間収益率を公表

今週は1週間夏季休暇のためブログの更新が遅れておりましたが、8月14日の日本経済新聞に、ESG投資に関する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のESG活動報告が公表され、2017年度の年間収益率は13~15%台で、ベンチマークとするTOPIXを下回ったとの記事がありました。GPIFは、今回はじめてESGに関する取組みを「ESG活動報告」として発表しました。

記事によりますと、GPIFが採用する3指数のうち、最も収益率が低かったのは、リーダーズ指数で13.74%で、収益率が高かったのは、女性活躍指数で15.29%との
ことです。

女性活用比率の高い企業は業績も好調であるという意見も一部ありますが(実のところは、女性登用と業績に因果関係はなく、業績が良くキャッシュに余裕のある大手企業が、女性活用を世間にアピールするためCSR部門、コンプライアンス部門などのビジネスの本流から離れた部署に女性幹部を登用して数を増やしているというのが現実かも知れませんが)、それを裏づける結果ともいえそうです。しかし、それでも、TOPIXの15.87%を下回っているということに変わりありませんが。

ESG投資の効果は、短期での収益率で見るのではなく、長期での視点で見る必要があります。つまり、GPIFのように国民の年金を長期で運用するところでは、投資先企業の短期的な業績ではなく、何十年先を見る必要があり、そのためには、企業のESGの要素が重要ということがESG投資の根底にあります。企業の10年後の業績などは、企業の現経営者ですら分からないのであって、であれば、業績以外のESG要素を見ていこうという極めて単純な発想とも言えます。

従って、今回の記事にあるように、TOPIXの収益率を下回るということは特に大きな問題ではありません。ただし、長期の投資といっても、やはり短期でも収益率が低いよりは、高い方がよいのが運用委託者の本音かと思います。

運用機関に長期での運用を委託するといっても、毎年の運用実績が低いとさすがに運用先を見直すというのこともあるかと思います。その観点からは、現在、GPIFは運用機関の3指数を使っていますが、今後も収益率が低い場合には、この指数の見直しをする可能性も出てくるように個人的に思います。

GPIFのESG活動報告は今回がはじめての公表で、今後毎年発行する方針とのことですが、私は肝心のESG活動報告がまだ読めていませんので、出来ればこの週末にでも目を通して、関心のある事項があれば、ブログで紹介したいと思います。