コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

【分かりやすいコーポレートガバナンス】役員報酬の指標

昨日はある投資先企業の1H決算説明会の動画を視聴したのですが、社長が資料の文字を読むだけのあまりにレベルの低い説明にがっかりして、終わった後にIR部門にメールでいくつかポイントを絞った質問をしました。この企業のIR部門の方は毎回真摯な対応をして頂き助かるのですが、社長は自分の言葉で文章に書かれていないことを説明しないと投資家の期待を裏切ることになります。IR部門にちょくちょくメールで質問をしているので、私は「面倒な個人株主」と思われているかも知れませんが、質問の都度、コーポレートガバナンス改善の気づきの指摘などもしているので(上から目線ではありません)、正直どう思われているのか、1年に1回程度気にしております。

さて、前置きが長くなりましたが、12月15日の日経新聞に「役員報酬の算定 日本「利益」重視」との記事がありました。日本企業は利益や売上高の達成度合いによって報酬額を決めている企業が多いが、米欧で圧倒的に多いのはTSRとのことです。

役員の報酬は固定報酬以外を増やすべきというのが今の流れで、営業利益やROEに連動させる日本企業が多いですね。日本では、TSRを役員報酬の指標にしている企業は29社あり、商船三井オリンパスのケースが次のように紹介されていました。

商船三井は22年3月期から取締役の株式報酬の指標にTSRを採用した。株式報酬のうち30%を東証株価指数、競合対比のTSR成長率をもとに支給額を決める仕組みだ。「株主価値の向上のインセンティブ(動機付け)」(同社)を目的としている。同じくTSRを報酬の指標にするオリンパスも「株主と経営陣の双方の視点から長期の業績と報酬を連動させる重要な基準」と位置づける。同社は経営者に基本報酬に対し一定割合の自社株式の保有を求めるガイドラインも設けている。

けどTSRにすると短期主義(ショートターミズム)を助長するのではないでしょうか。報酬は1年間の業務の成果を評価して支払われるのだと思いますが、1年間で株価を向上させるには、基本的にその1年間の企業業績を高めるのが肝になります。とすると、1年といった期間ではコストになる研究開発投資・人材投資は抑制しようと思うところかと思います。詳しい報酬設計は有価証券報告書役員報酬を見る必要があるかと思います。

あと最近ですとESGへの取組みを報酬に反映させている企業も少しずつ増えていますね。けど、ESGの成果などは定量化するのが難しいです。従い、ESGに前向きな企業であることをアピールしたいというのが、そのような企業の狙いであり、報酬への寄与度合いは実のところ極め低いというのが実態かと想像します。「当社はESGを報酬連動にしています!」というように積極的にアピールしているような企業があれば、是非とも株主総会に出席して、その具体的内容であったり、報酬への連動比率について詳細質問するとよいかと多います。

ESG原理主義みたいな企業もあり、勘違いして明後日の方向に進んでいる企業もあると聞いております。ESG部門は会社の主流部門ではないので(コンプライアンス部門と同じ)、事業や営業などビジネスの経験のない社員が非常に多く、結果、「ESGおじさん・おばさん」が多いことに注意が必要です。