そういう中、6月24日の日経新聞で「物言う企業の逆襲」という記事がありました。要するに、物言う株主に対して企業サイドも従前のように黙っているのではなく、積極的に企業の考えを発信していくことを「物言う企業」と呼んでいるようです。ネットで、「物言う企業」を調べたところ、この日経新聞の記事でしか言葉が出ておらず、大変良く出来た表現であるなと思いました。今後、物言う株主の単語と同じように市民権を得ていくのではないでしょうか。
議決権個別開示などの外部環境の変化の中、今年の株主総会では株主提案件数が過去最高であったようです。しかし、ふたをあけてみると、たしかにアクティビストが企業の株式を取得したり、株式を買い増すケースはそれなりにあったものの、会社提案が株主総会で否決されたり、株主提案が可決された様子は今のところないようです。専門商社の蝶理の株主総会では、ストラテジックキャピタルが出した政策保有株式の売却などに関する株主提案も否決されたようです。
株主提案が否決された理由の1つは、企業サイドが投資家との対話の機会を積極的に行ったことによるものです。
しかし、今回はひとまず会社側の勝利で終わったといえますが、来年からは難しくなるのではないでしょうか。今回は議決権行使の個別開示の初年度ともいえますが、来年以降は会社提案に対する機関投資家の判断もより厳しい目が向けられるはずです。現に蝶理のケースでは、株主提案は否決されたものの賛成率が10%を超えていたようです。
株主提案が否決されたからといって企業は必ずしも安心はできません。
アクティビストは、アセットオーナーから資金を預かり運用しているプロフェッショナルであり、株主総会に土産目的や過去の勤務した自社の経営状況を何となく懐かしく見たいという社員OBなどのファイナンスなどの知識のない素人株主・投資家とは全く異なるものであり、株主提案が「残念ながら提案が否決されたので、引き下がります」ということにはなりません。現に、新聞報道などによると、パナホームでは、香港のヘッジファンドが株主提案が総会で否決された後、少数株主の利益が損なわれたとして訴訟の提起することを宣言したという記事がありました。このように株主提案が否決されても訴訟という手段を講じることもあるのです。
以前からブログに同じようなことを書いておりますが、企業サイドとしても、自分たちが対峙するのは、ファイナンスやコーポレートガバナンスに精通したプロフェッショナルであるという認識を強く持ち、企業サイドも企業価値・株式価値の算定はじめ投資銀行と同程度のファイナンス知識を持ち、かつ、会社法やコーポレートガバナンスなど数値以外の専門知識も併せて持ち、全体を包括して理解できる人材を配置した専門部署が有事の時の対応部署として、または平時の時には株主・投資家に自社をPRする部署として大切になってくるのではないでしょうか。