中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

「物言う個人投資家」の武器としてのコーポレートガバナンス

5月14日の日経新聞にインベストメント・チェーン特集が組まれており、「物言う」機関投資家というタイトルの記事がありました。「物言う株主」は、いわゆるアクティビストであり、企業に対して会社法上の株主提案権を積極的に行使して、企業価値の向上を図り、最終的には増配によるインカム・ゲインまたは保有株式の売却によるキャピタル・ゲインにより利益を得る(金を儲ける)株主をいいます。

一方、「「物言う」機関投資家」とは、みずから株主提案権は投資先企業に行使はしないものの、会社提案議案に反対したり、アクティビストによる株主提案議案に賛同する機関投資家をいいいます。「物言う」機関投資家の増加の背景には、スチュワードシップ・コードでの議決権行使結果の個別開示があります。アセットオーナーの利益の最大化を図るのが、アセットマネジャーである機関投資家の役割であり、投資先企業の株主総会で合理性の観点のみから議決権を行使し、その結果を詳細に開示せよということになったことが大きな背景にあります。

ところで、個人投資家の場合にはどう考えればよいでしょうか? 個人投資家は、機関投資家とは大きく立場が違うのですが、自分自身がアセットオーナーです。つまり、アセットマネジャーという立場で、アセットオーナーである自らの利益の最大化を図るのが、個人投資家と言えます。当たり前と言えば、当たり前のことですが。

では、個人投資家はアセットマネジャーとして「「物言う」機関投資家」のような情報や能力を有しているのでしょうか? 答えは「NO」です。結果、銘柄に投資した後は、投資先企業が増配をしてくれたり、株価が上昇することをただただ祈ることしかできず、ヤフーファイナンスで素人のテキトーなコメントを見て、日々の株価に一喜一憂するという弱者の立場に甘んじざるを得ません。「物言う」機関投資家との決定的な違いは、コーポレートガバナンスの知識・能力の不足です。

でもこれっておかしくないでしょうか? 日本の株式市場の17%は個人投資家です。企業価値の最大化を図るためにコーポレートガバナンス強化を政府が求め、機関投資家コーポレートガバナンスを理解して、その改善・強化のための提案を企業に対して行います。しかし、市場の17%を占める個人投資家だけは無知なのです。また、政府も個人投資家コーポレートガバナンスを理解することは全く推奨していないのです。たしかに、個人投資家の個々の投資額は微微たる金額ですが、個人投資家も集団となれば大きなパワーを発揮するはずです。

個人投資家である個人が、機関投資家やアクティビストと同様にコーポレートガバンスに精通すれば、投資企業に株主提案をすることは出来ないにせよ、会社提案議案をどう判断するか、株主提案議案に賛同すべきかそれとも反対すべきかを的確に判断し、企業価値向上(=株価向上)を図ることが出来るのだと私は考えます。個人投資家が自己の利益の最大を図るための武器がコーポレートガバナンスへの理解力です。従い、個人投資家が株式市場で力を発揮するための武器となるコーポレートガバナンスについて、今後、基礎的な事項について解説して行きたいと思います。

そのためには材料が必要ですが、6月に改訂されるコーポレートガバナンス・コードをベースにするのがベストと思います。コーポレートガバナンス・コードは、物言う株主、物言う機関投資家が企業に株主提案をしたり、会社提案の内容を判断するためのバイブルです。従い、個人投資家もじっくりとコーポレートガバナンス・コードを読む込み、実務の観点から理解することで、機関投資家と同等の力をつけることが出来ると私は確信しています。

今後は改訂コーポレートガバナス・コードの読み方、考え方などを実務目線も交えて、紹介していきたいと思いますので、是非、コーポレートガバナンスを自分の武器にして、「「物言う」個人投資家となりたい」と考える方は今後、ブログをご覧頂ければと思います。恐らく大学生の方などにも参考になるはずです。半年以上前にあるきっかけで、早稲田大学の学生の方が卒論でコーポレートガバナンスを研究しており、その関係で質問を受けたことがありますが、少しは役に立てたのだと思っています。

コーポレートガバナンス・コード等の観点から、「この企業の株主総会の会社提案議案をどう判断したらよいか?」「この企業の株主提案議案に対してはどう考えたらよいか?」という疑問があれば、このブログの右欄のプロフィールの下のお問い合わせからお気軽にご質問を頂ければ、時間の限り、分析をしてご回答したいと思います。