コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

通常の配当性向とグループ会社からの配当性向の考えの違い

先日の新聞報道によれば、企業の行う配当がリーマンショック時の2倍に増えているとのことのようです。企業業績も向上して配当を増やす企業が増えているということかと思います。

配当には、一般的には、自社の株式を保有する株主への中間配当、期末配当があります。配当が多いか少ないかの判断基準として配当性向という言葉があります。これは自社の当期純利益(税金を控除した後のPLの最後にある利益)に対する株主への合計配当額の占める比率をいいます。ある企業の当期純利益が100億円として、その期の配当金合計が30億円であれば配当性向は30%(=30億円÷100億円)となります。ちなみに、残った70億円はどうなるのかといいますと、バランスシートの純資産の部にある繰越利益剰余金(英語だとRetained earningで「RE」と略することも多いです)として蓄積されます。

以前にある会社が100%配当を実施したということも聞いたことがありますが、通常は20%~30%台を目指す企業が多いような印象を持っていましたが、新聞報道ですと2016年の上場企業の平均配当性向は35%程度のようです。

では、あまり言われないのですが、企業が自社の子会社から受け取る配当については、配当性向はどう考えればよいでしょうか。100%出資する子会社が当期純利益を出した場合です。

各社方針があるのかも知れませんが、この場合、先に書いたように35%などということは通常なく、基本的には100%配当ということになるかと思います。

問題は実際にこれがスムーズになされているかということです。ここで子会社が日本法人である場合と海外法人である場合を分けて考える必要があると思います。

日本の子会社であれば、親会社から転籍した方が経営陣になることも多く、また日本人同士ですから100%配当は実施しやすいのですが、海外法人の場合は結構難しいケースもあるのではないでしょうか。

海外展開を進めている会社は、現地法人のトップは現地採用のマネジメントとし、日本人を経営トツプから外している会社も結構多いと思います。このような場合、現地法人のトップは自分たち現地で稼いだ利益を本社に吸い上げられることに抵抗するケースも中にはあるのではないでしょうか。要するに「俺たちが努力して稼いだ利益をどうして親会社に全部上げる必要があるのか?」ということです。

しかし、そもそもグループ経営とは、一体としての経営であり、子会社は法人ではありますが、実態としては親会社の1部門と考える必要があります。また、当期純利益の算定に至る過程で、グループ会社の従業員への給与、役員賞与は販管費で既に控除されているのであり、特段の事情がない限り、最後に残った当期純利益を出資者である株主、つまり親会社に還元すべきものなのです。また、現地に利益をおいておくと、横領等の不正が発生するリスクも高いのではないでしょうか。

ただし、100%配当性向といっても、現地法人が設備投資(Capital expenditureということで通常「CAPEX」といいます)をするような場合は別です。この場合は、このCAPEXに見合った金額は配当から控除するということになります。金がないと設備投資ができないからです。

まとめますと、日本の親会社としては、配当の考え方の社内規則などを制定して、現地の経営トップには予め十分な説明をしておき、100%配当の発想をきちんと認識させるということが重要になってくるように考えます。