3月3日の日本経済新聞で物言う株主(アクティビスト)の日本株の買い増しが最高になっているという記事がありました。本日は短いですが、これについてごく簡単に触れたいと思います。
三井住友信信託銀行が投資活動を確認できる10ファンドの売買を集計したところ2018年は前年を7社上回る66社の株式保有比率を引き上げ、3年ぶりに最高更新ということです。
記事によれば、コーポレートガバナンス改革の流れに乗り、存在感を強める構図が見られ。2019年も買い増しは増える予想とのことです。
何度もブログで書いてはいますが、最近のアクティビストの提案内容は政府の進めるコーポレートガバナンス改革の流れに沿った合理的かつ洗練された提案が多いです。機関投資家は議決行使結果を個別開示する動きの中、合理性ある株主提案には賛成しないとアセットオーナーから責められることになり、資金をひき上げられるリスクもあり、これがアクティビストの活動を促進する背景にもなります。
3週間ほど前に有楽町の東京国際フォーラムで開催された東京IRフェア2017に参加しました。
中小クラスの上場企業の出展が多かったのですが、ブースを見ていると各社のIR担当の方が声をかけてくるので、話を聞きました。
何故か株価が2000円~3000円の会社が多く、割安株とは思えないので私の投資対象でないのですが、事業内容を熱心に説明してくるので事業に関心はなかったため、「御社の配当性向はいくらか?将来の配当性向はどう考えていますか?」などと話の流れで聞いてみました。結果、「30%を達成しています」と胸を張って回答されていました。
さて、ここが問題かと思います。
何故30%でよいのかきちんと説明がつく理由があるのかという点です。日本企業の多くが、配当性向約30%、自社株買いを含んだ総還元性向が約45%であるのは事実ですので、右へ倣えにしたい気持ちが分かります。
しかし、これはアクティビストには通用しません。会社法、金融商取引法などの法律では、配当性向の基準率など何も決まっておらず、その他資本剰余金と利益剰余金などの合計を上限に配当できるとあるだけです。つまり配当原資のバランスシート上の限度の規制があるだけです。
上場企業は、自社がアクティビストから狙われた場合には「配当性向30%にしています」というのは、何の説得的な理由にならないのです。今回の日本経済新聞の記事を読んで、上場企業は他社のことと認識するのではなく、他社へのアクティビストによる株主提案の内容と自社の株主構成を見て(=合理的な株主提案に賛成する海外・国内機関投資家の保有比率がどの程度か)、自社のウィークポイントがないか、あるのであれば有事に備えて理論武装することが必要とあらためて思いました。