中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

株式投資先としてのファミリー企業(オーナー系企業)

本日、1都3県に非常事態宣言が出ました。私の場合、勤務地及び自宅とも東京都内ですので、明日から都内は夜は閑散とした状況になるのだと思います。一方で、本日の日経平均株価終値は前日比+434円の27,490円でした。

昨日ブログで紹介したエムビーエス(1401)は前日比▲6円の703円でした。同社は昨年の8月下旬に本業にあまり関係のないPCR検査装置の開発で株価が600円前後から数日で1,000円まで上がり、その後、短期間で600円台に下がった経緯があります。今回は本業のスケルトン工法での特許取得ですので、このまま上がる気もしたのですが、株価の動きを見ると明日以降も下落する様子ですが、中長期投資としては依然として魅力ありかと思います。

さて、前置きが長くなりましたが、本日は投資先としての上場ファミリー企業について書きます。上場ファミリー企業とは、同族経営企業で社長がオーナー一族で大株主として支配的株式を保有している企業です。

ファミリー企業については、時々日経新聞でも記事に書かれるように長期で見るとサラリーマン社長の企業と比べて業績面のパフォーマンスが優れていると言われており、実際にそういう研究結果も出ているようです。勿論、私は検証したことはありませんが、そう言われている以上、事実としてそうなのだと思います。では、その理由は何でしょうか?

これも世間で言われていることですが、3つほどあります。1つ目の理由は、オーナー社長はじめ一族は企業経営を監督する強いインセンティブがあるということです。例えば、先日ブログに書いた象印マホービンの場合、社長が830万株の自社株式を有しています(保有比率は12.40%です)。このようにオーナー社長は、「超富裕層」ですが、その富の源泉は自社株式に依存しており、当然、株価に影響を与える事業経営及びその監督に強いインセンティブがあります。サラリーマン社長の場合は、自社株式を保有していても数万株といったケースが多く、発行済株式総数に占める保有比率は0.1%すらないのが普通かと思います。

2つ目はオーナー一族の会社に対する愛着だと思います。これはサラリーマンには生涯理解することができないのだと思いますが、ファミリーで事業を営み大きく成長させたというファミリーの歴史において、会社は一族の分身と言われます。つまり我が子同然です。企業はゴーイング・コンサーンと言われますが、オーナー一族にとっての精神の拠り所が会社の存続なのだと思います。ゴーイング・コンサーンという言葉はオーナーのための言葉の気もします。

3つ目に、社長の在任期間が15年、20年以上となるため真に長期視点で事業を考えることが出来るという点です。

いずれも世間一般で色々な書籍やビジネス誌で言われていることであり、サラリーマンであれば誰でも分かっていることと思います。勿論ファミリー企業の弊害もあります。それは創業社長は優秀ですが、ボンボンで育った2代目社長以降がボンクラの社長であるケースです。

オーナー社長の企業は、取締役といっても実際には部長クラスとほとんど変わらないケースがかなり多いかと思います(勿論お給料は部長より高いかと思います)。オーナー社長に逆らうこと=即クビです。取締役は法的には会社との関係は委任ですので、いつでもクビにできます。とすると、オーナー社長の判断が正しくなくとも、物を言える取締役はゼロです。サラリーマン社長に物を言える人も少ないですが、ましてやオーナー社長になど物を言えるはずがなく、オーナー社長がボンクラの場合、その会社の将来は真っ暗ということになります。

私は中小型銘柄(時価総額1,000億円以下)の投資が専門ですので、投資先企業はオーナー社長の企業が多いのですが、特にオーナーが高齢である場合には、次の社長が誰になるかとても気になるところです。しかし、心の中で気にしていてもどうにもなるものではないので、バーチャル総会、オンライン総会が解禁された際には、投資先企業の株主総会で後継者計画(サクセッションプラン)の状況を質問したいと思っています。