先日、議決権行使助言会社について記載をしましたが、その後に引き続き、日経新聞によれば、米国では、議決権行使助言会社に対する規制の強化の動きがあるということのようです。
米国議会で、金融選択法案というものの審議が進んでいるようです。良く分かっていませんでしたので、ネットなどの公開情報でざっと調べたところ、米国では、ドットフランク法(金融規制改革法)という法律が2010年7月に制定され、金融規制に関して規定しているようですが、この金融選択法案では、金融機関の経営自由度を大きく高める内容のようです。しかし、金融選択法において、規制緩和の中、議決権行使助言会社については、規制が強化される流れに向かっているということです。
報道によれば、議決権行使助言会社の組織体制などの開示が助言会社に要請されるようですが、企業にとって好ましい点は、分析対象となる企業に、株主総会議案に議権行使助言会社の発行するポートを見せて、意見を述べる機会を与えるというようなことになるとのことです。
議決権行使助言会社であるISSやグラスルイスの発行するレポートは、私自身も目にしますが、たしかに現状は発行したレポートを目にするだけで、事前に会社に対して内容について確認をとるということは行われていません。
実際には、過去に自社のレポートを見た際、記載内容について、「誤解しているのでは?」と思った箇所があったこともあります。議決権行使助言会社は、5月、6月の時期に数千社の会社について株主総会の招集通知を見てレポートを作成するので、一定の時間の範囲内で機械的に判断せざると得ないため、場合によっては、見誤りがあることがあるかも知れませんし、また企業サイドの開示内容が分かりにくかったり、企業の意図が文字として十分に明記されていない場合には、企業の考えと異なる解釈をされる可能性も十分あると思います。
このため企業の実務担当者は、助言会社のレポートの内容について、「これは違うのでは?」と思ったこともあったかと思います。
その点では、この金融選択法案が可決されれば、事前に意見を述べる機会を企業に与えることにより、企業サイドの意見もレポートに反映され、実質を踏まえた議決権行使が期待できることにつながるかも知れません。
不利益を受ける場合には、「告知聴聞の機会を与える」、つまり事前に内容を知らせて、弁解の機会を与えるというデュープロセスという大原則がありますが、これと同じような考え方と思います。
ISSなどの基準に必ずしも準拠しない海外機関投資家も最近は増えていますが、そうはいっても依然として今後もこれまでどおりISSやグラスルイスのレポートは機関投資家の議決権行使に大きな影響を持つかと思います。その点では、この法案が成立した場合には、企業にとっては、より好ましい方向に向かうのでははないでしょうか。