中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

高い質を持った社外取締役を選んでいますか?-経済同友会「経営者及び社外取締役によるCEO選抜・育成の改革」レポートより

2019年5月17日に経済同友会の企業経営委員会(委員長 富山 和彦 氏)が「経営者及び社外取締役によるCEO選抜・育成の改革―多様なガバナンスに応じた最良のサクセッションの追求―」を公表しました。

このレポートは、ガバナンスの本質・本丸は、大き環境変化の中で不断の変革をリードする立場にあるCEOの選解任で、CEOの選解任、選抜・育成についての取り組み方法、考えられる選択肢等を整理した内容になっています。

CEOの選抜・育成の先進事例に見る共通項として以下が記載されています。

  1. 企業理念を共有し、実践する
  2. CEO の選抜 ・育成 に現社長 、会長と取締役が 共同で真摯に取り組む
  3. CEOに求められる資質、選任の基準を明確化する
  4. CEOの任期について公明正大に議論できる環境をつくる
  5. 高い質を持った、意欲ある 社外取締役の獲得と活用を目指す など

 興味深いのは、上記の「5」で、ここでは社外取締役に求められる役割・心構として、詳しく次の事項が記載されています。

  •  執行側との摩擦、衝突を恐れず企業価値向上ためにCEO と是々非々で議論する(裏返しとて社外取締役がその役職に経済的に依存していないことが重要)
  • 社外取締役の強みを活かし、複数の社外取締役を、外部の知見に基づき経営課題の解決策を提案するチームとして機能させる。
  • CEO の選抜・育成作業の重要な部分を担ってもらうに足りる経営的な経験、知見、コミットメントを期待できる人材であるべき
  • 指名委員会、報酬委員会において相当の時間とエネルギーを注ぎこめること
  • 状況や空気に流されず、 第三者としての客観的視点を維持するセルフ・ディシプリンを持つ
  • 社外取締役の退任後も数年間はそ企業経営業績に対し責任を負う長期的な視点と覚悟を持つ
  • 経営者経験者が積極的に他社の 社外取締役をつとめるべき など

 いかがでしょう。参考になるかと思います。まとめますと、CEOの選任・解任(選任したけど、能力が足りなかったことが判明した場合には解任しなければなりません)には、社外取締役の果たす役割が大きく、そのためには、その役割を果たすに足る資質を有する社外取締役を選任すべしということです。

最初の「CEOと是々非々に議論する(裏返しとて社外取締役がその役職に経済的に依存していないことが重要)」の箇所などは、社外取締役としてのお給料が生活の糧になると、サラリーマン役員と同じで、自分を雇ってくれたCEOに物を申すことは出来ないので、経済的に余裕のある人が社外取締役に就任すべきと明確に言っています。

最近、取締役の選任の株主提案を行うアクティビズムも増えています。またその取締役が適切な能力を持つと合理的に判断される場合、その提案に対する一般の機関投資家も増えています。

アクティビストから、取締役選任の株主提案などなされる前に、自社の社外取締役を上記資質がある者を真面目に選任しておくか、それが困難であれば、そういう資質などなくても、対外的には「資質がある」といえるような説明材料を事前に準備しておくことが重要かと思います。