コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

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東証が改訂コーポレートガバナンス・コードを公表

6月1日に東証が改訂コーポレートガバナンス・コード(改訂CGコード)を正式に制定・公表しました。

本年6月1日からの適用で、上場企業各社は、準備出来次第速やかに対応し、遅くとも本年12月末まで対応することとされています。3月30日に金融庁が公表した案とほぼ同内容となっています。

また、パブコメに関する東証の考えも併せて公表されておりますが、改訂CGコードや投資家と企業の対話ガイドラインの解釈について東証の考えが示されている箇所もあり、参考になる東証の主な考えについて、以下紹介します。

<資本コスト> 

・把握する資本コストに加えて、資本コスト算出の背景にある考え方などについても、投資家と上場会社との間で建設的な対話が行われることを期待

<政策保有株式>

・個別の政策保有株式について、取締役会において保有の適否を検証するに際して、執行側において一定程度の準備作業を行うことも想定されるが、そうした場合であっても、実質的に取締役会自らが個別の銘柄について検証を行うことが必要

・必ずしも個別の銘柄ごとに保有の適否を含む検証結果を開示することを求めるものではないが、「検証の結果、全ての銘柄の保有が適当と認められた」といった一般的な開示ではなく、取締役会における検証に際し、コードの趣旨を踏まえた、次のような具体的開示が行われることを期待
① 保有の適否を検証する上で、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを含めどのような点に着眼し、どのような基準を設定したか
② 設定した基準を踏まえ、どのような議論を経て個別銘柄の保有の適否を検証したか
③ 議論の結果、保有の適否について、どのような結論が得られたか

・ 政策保有株式の縮減に関する方針・考え方については、政策保有に関する投資家と上場会社との対話をより建設的・実効的なものとするため、自社の個別事情に応じ、例えば 保有コストなどを踏まえ、どのような場合に政策保有を行うか、 検証結果を踏まえ、保有基準に該当しないものにどのように対応するか等を示すこと

以上になりますが、これらは一例であり、他にもパブコメに対する東証の考えが示されていますが、今後の実務指針になる記述もいくつかあります。

政策保有株式以外にも、指名委員会等設置会社でない監査役設置会社では、社外取締役を主要な構成員とする任意での指名・報酬委員会の設置が求められています。今回の改訂CGコードへの対応は、コーポレートガバナンスにこれまで割ける人的リソースの小さい企業には、負担は重くなると思います。

ただし、金融庁東証も何度も繰り返し言っていますが、CGコードは必ずしも全ての事項についてコンプライが求められるものではなく、エクスプレインすることでもよいとされています。

エクスプレインというのは、コンプライ(=遵守)が出来ない場合には、自社の実態や考えを踏まえ、遵守できない理由を説明することです。

例えば、取締役会の構成で、改訂CGコードでは、ジェンダーや国際性が求められることになりますが、女性の取締役を入れる必要がない、また、ビジネスが国内が主なので国際性は不要という場合には、不要である旨のエクスプレインをすれば良いのです。
イギリスでは、CGコードについて、エクスプレインしている企業も多くあると聞いていますが、日本企業は真面目なので、コンプライすることが多いですが、この点は、企業は何ら躊躇することなく、コンプライできない事項は、エクスプレインをすればよいと思います。

一方、エクスプレインの理由が難しい箇所もあると思います。

CEOの解任手続きなどはその1つと思います。改訂CGコードでは、業績等を鑑みたCEOの解任手続きの設定が求められていますが、オーナー企業などはコンプライは難しいのではないでしょうか。

オーナー企業では、子息や親戚が後継者になるのはあたり前ですが、業績評価等を踏まえた解任基準を設けることについては「何これ?」といった感覚と思います。後継者計画の策定も同じと思います。
しかし、オーナー企業だからオーナーの子息が当然に社長になるというのは、資本市場から見た場合には説明はつかないと思います。

オーナー企業であっても上場している以上は「公器」であるという認識をあらためて持ち、機関投資家が納得する対応をする必要があります。機関投資家は、CEOがオーナーの子息であろうが、サラリーマン上がりあろうが、企業価値を高めるCEOに関心があるのです。オーナー経営者は、きちんとした後継者計画を策定し、自分の子息がその計画の基準を充足する資質を持てるよう育成することが必要になってきます。

12月末まで上場企業は対応でバタバタすることになるかと思います。

そもそも、前にもブログで書きましたが、市場での資金調達の必要性がない上場企業は、上場の本来の意義がないので、改訂CGコードなどの面倒なことで手を煩わせることになるのであれば、これを契機におもいきって上場を廃止するということも真剣に考えてよいのかもしれません。廃止することによって、資本市場関係者の対応などを気にすることなく自由に経営できる上、経理の決算担当部門やIR部門など収益を生まない部門の人員を大幅にリストラすることで利益アップも期待できます。