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経営企画担当の実務上の視点

東証1部上場企業で経営企画担当のマネージャー職にあるものです。経営・事業企画担当の立場から M&A、事業戦略、IR、戦略法務についてアカデミック+実務の視点からの気付いた点や考えることについて情報発信していきます。

課徴金減免制度(リニエンシー制度)の対象拡充の検討

先日、カルテルの際の企業の課徴金減免制度(リニエンシー制度)の対象を拡充する方向で検討するとの新聞報道がありました。

リニエンシー制度とは日本では2006年に導入された制度で、カルテルの当事者企業であっても自己申告をすれば課徴金が免除されるというもので、申告順位が第1位の企業は全額免除、第2位以下は最大50%免除という制度です。元々は米国の制度であり、米国はじめ各国でもリニエンシーの制度はありますが、制度の詳細は国により異なっています。

検討されている方針では、第6位以下の企業であっても申告を受け付けるとのことのようです。自主申告しても当局は必ずしも十分な証拠を入手できるものではないため、なるべく減免の対象を広げてカルテルを行った企業に自主申告を促し、立件のための証拠を収集したいということが狙いではないでしょうか。

ここ数年は自動車部品メーカーがカルテルの摘発を受け、課徴金を課される、関与社員が米国の刑務所に収監される、集団訴訟を提起されるなどしています。特に米国での集団訴訟の場合には、和解で解決されるケースが多いですが、報道や各社の開示書類を見るとその金額が巨額になっています。

カルテルを行った場合には、一刻も早く自主申告をすることが重要になってきます。
摘発を受けたことのない業界は、カルテルの事実を知っても、同業他社がリニエンシーをすることはないので当社も黙っていようなどと考えることがあるのかも知れませんが、そういうことを言っている間に他社に出し抜かれるのではないでしょうか。

特に、同業他社がカルテルの摘発を過去に受けた経験がある場合、その会社は痛い経験をしているので、一刻も早くリニエンシー申請をしようというインセンティブが働きますので、他社が先駆けることはないなどという安易な考えをするのではなく、迅速かつ正確に当局に申請することが重要です。リニエンシーの順番が遅れ、課徴金を課された場合には、後日、自社の株主から株主代表訴訟を提起されるケースもあるようです。

このためには、社内のコンプライアンス教育が大切になってきます。コンプライアンスは行き過ぎると企業の営業活動に萎縮効果を与えることになりますが、最低限のルールは遵守する必要があり、そのためには営業部門の社員に教育をすることが大切です。ただし、リスクばかりを強調する行き過ぎた教育とするのではなく、「黒」と「灰色」を明確にした教育でないと、ひいては企業の収益力を弱めることにつながります。

とするとコンプライアンス部門は、外部の弁護士が言ったことをそのまま「子供の使い」のように右から左に伝えるのではなく、ビジネスの実務に疎いながらも、収益を上げるという企業の至上命題の下で、実務上、何が駄目で何がセーフといえるかを明確に社内で伝えなければなりません。

コンプライアンスや法務の経験しかない社員は、大きな問題になった時に自分が責められるリスクを考えて、「弁護士がこういっています」「大家の弁護士の意見です」と言い、広めにリスクを指摘するというインセンティブがどうしても働きます。これはサラリーマンの性質上、分からないでもないのですが、外部の意見をそのまま言われるがままに社内に伝えることは子供でも出来るのであって、何とか「白」または白に近い「灰色」にもって行く努力をすることが、営利集団である企業に所属する社員の役目かと思います。

リスクとリターンは表裏一体ですが、現実には問題にならないリスクばかりを挙げるのではなく、そのリスクに躊躇することで、どういうリターンを得ることが出来なくなるということを常に念頭において、見極めて行くことが大切と思います。