9月25日の日経新聞に東証1部の中、1,300社について有価証券報告書(有報)のリスク情報の開示調査結果の記事が掲載されていました。
有報の「事業等のリスク」とは企業が事業活動を行う上での事業上のリスクを開示する箇所ですが、記事によると、サイバー攻撃をリスクとして言及した企業が前年度に比べて大きく増加したということです。ただ、欧米企業に比べて、サイバーリスクの認識程度がまだ小さいということです。
この「事業等のリスク」の箇所は、2019年度の有報の大きな改正事項の1つです。これまでは、各社ともリスクと考えられる事項を沢山列挙していましたが、これではリスクが広すぎて本当のリスクが分からないということで内閣府令が改正され、重要性の高いリスクを分かりやすく開示せよというのが改正内容です。
従来は、「為替変動のリスク」「原料確保のリスク」「コンプライアンス違反のリスク」など当たり前のことが、抽象的な内容で開示されており、具体的なリスクが不明でした。それが改正されたということです。
しかしながら、今回の有報を見ると依然として、従来の開示と何ら変わり映えせず、つらつらとリスクが並べてあるだけの企業が多いですね。私の投資先銘柄など、中小型銘柄ということもあり、開示にあまりリソースをかけていない企業がかなり多いので、全くもって開示のレベルが「お子様」です。
投資先銘柄のリスクを見る場合、決算説明会に参加できない個人投資家は有報のこの箇所しか見るべき手段はないのです。従来と同じ開示をしている企業は、来年の有報からは大きな見直しを検討する必要があると思います。この点、金融庁が開示の好事例集を出しており、事業等のリスクの開示が良い例として、味の素、日本郵船ほかをあげています。
個人投資家の方は、これらの有報を一度眺めた後に、自分の投資先銘柄の有報の事業等のリスクの書きぶりを見比べてみて、「良く分からない」ということであれば、IR部門などに質問をしてみると良いかも知れません。そして大事なのは、リスクを明確に理解した後、そのリスクの回避又は低減について企業がどのような方策を考えているかを確認することです。従い、投資先企業に聞く際には、次の4点がポイントになるかと思います。
- 当該企業の事業領域の参入障壁は何であるのか(参入障壁の高さの確認)?
- その参入障壁を毀損するリスクは何であるのか?
- 当該リスクの発生頻度及び発生した場合の影響度はどの程度か?
- 当該リスクの回避施策、又は発生の際の影響の低減施策は何であるか?
ということで、本日は、私は重点投資銘柄の本年度の有報の事業等のリスクの確認作業をしています。