中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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ガバナンス改革-独立取締役の会の提言

10月16日の日本経済新聞で、「独立取締役の会」が独自のガバナンス改革案を纏めたとの記事が掲載されていました。

旭化成IHI旭硝子伊藤忠商事などの大手企業の元経営トップのメンバーを中心に構成される昨年秋に結成された会のようです。主要メンバーの方は、現在も他社の社外取締役を兼務されており、豊富な経営実務経験を踏まえて、より実態に即した提言をされたということです。

新聞に掲載の提言内容についてポイントをあげると次のような内容です。

<ガバナンス体制>
・取締役会はいざという時に社長を解任できるよう、社外取締役の員数を過半数とするか、指名委員会に社長解任権限を付与するのが望ましい

<取締役会の重要な役割>
・社長の評価
・社長の後継者計画
・経営戦略の策定と実施状況の監督
役員報酬制度の設計
コンプライアンスと危機管理

<顧問・相談役制度>
・在任期間の定めのない終身の顧問・相談役や明確な役割のない顧問・相談役は廃止すべき など

内容の詳細までは掲載されていませんでしたので、詳細なコメントは出来ませんが、ガバナンス改革では、私は前々から実務の経験者の視点がとても重要であると考えていました。経産省金融庁、大学教授などの専門家の意見は、他国の法制度、会社法や資本市場の意見を踏まえたあるべき姿から論じられており、それは勿論重要とは思います。

しかし、コーポレート・ガバナンスを実行するのは、事業会社であることを認識する必要があります。「こうあるべき」という姿を作っても、それが日本企業の実務からかけ離れていると意味がありません。

例えば、社外取締役制度を1つとっても、よく3分の1以上の員数が必要とか言われていますが、単に人数を増やすこと自体には、あまり意味があるとは思えません。

役割として監督機能を強化するのであれば、いくら人数を増やしたところで、普段業務に携わっていない以上、不正を見抜くことはできません。実際に不祥事のあった企業でも社外取締役は導入されていますが、不祥事を未然に防げなかったことを見れば明白です。

通常、社外取締役は取締役会に上程された事項しか知り得ないのであって、企業の不正を探し出すことは難しいし、また、それは社外取締役の役割ではないと言えます。

この点、独立取締役の会の提言では、社外取締役過半数の確保をあげておりますが、その目的は社長の解任とあり、なるほどと思いました。

仮に経営トップが不正をしたとしても、社長を解任をするということは、社長をトップとしたピラミッドの下層にいる社内取締役にはまず期待できないところ、それを出来るのが社外取締役であり、従って法的にも解任できる権限を持てるよう員数を過半数以上にするという論理かと思います。暴走した経営トップを法的にストップをかけることを狙いに掲げており、非常に実務に即した視点かと思います。

コーポレート・ガバナンスの策定には、先に言ったように幅広い見識が必要になり、その観点からは、役所や学者が青写真を描くことは賛成です。しかし、細目は、日常の実務の運営の視点を入れる必要があり、その観点からは、企業の経営者の視点も十分に反映させる必要があると思います。このような独立取締役会の会といった企業サイドの目線に立つ会は非常に有益かと思います。

インターネットで、「独立取締役の会」のキーワードで検索したところ出てきませんでしたが、この提言が今後、日本企業のコーポレート・ガバナンスにどのような影響を与えることになるのか関心のあるところです。