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経営企画担当の実務上の視点

東証1部上場企業で経営企画担当のマネージャー職にあるものです。経営・事業企画担当の立場から M&A、事業戦略、IR、戦略法務についてアカデミック+実務の視点からの気付いた点や考えることについて情報発信していきます。

#9 企業買収防衛策とは④

企業買収防衛

15%~20%以上の株式を取得する場合には、買収防衛策の適用がありますが、これを下回る株式取得の場合には、買収防衛策の適用はありません。なお、買収者が海外投資家の場合であっても対象の日本企業が買収防衛策を導入している場合には、買収防衛策の遵守が必要になります。

では、数%(例えば5%とします)の株式を保有するマイノリティー投資家が出現した場合には会社はどのような対応をすれば良いでしょうか。

具体的には、5%の株式の取得にとどまり会社に色々と主張をしてくるアクティビストにはどのような対抗策があるかということです。ちなみに、アクティビストとは事業運営の意思はなく、株式を保有して経営に関して提言し、投資により高いリターンをあげることを狙いとする投資家をいいます。

結論からいいますと、法的には有効な対応策はないといえます。
第三者割当増資をするといっても、前回書きましたように買収者への対抗措置としての増資はその効力が問題になり、また、そもそもアクティビストの保有株式比率は小さく稀釈化の大きな意義がありません。としますと、有効な法的対応が出来ない以上は、アクティビストの主張を聞いてそれに対して真摯に対応することになると思います。ちなみにアクティビストの主張としては、増配、取締役辞任、事業分離、他社との業務・資本提携、遊休資産の売却などを主張することが多く見受けられます。

従い、これら主張に対して会社はきちんと理論的に説明をして納得をさせて、保有株式を市場で売却して頂く(「退場して頂く」)という方針をとることになります。
なお、マイノリティーの比率しかないので適当に扱っておこうという姿勢は絶対に避けなければなりません。たしかに、数パーセントの比率であれば会社の経営への直接的に大きな影響を及ぼす権利は行使できないのですが、他の株主を巻き込んで自己の主張を通す恐れがあります。具体的には、1%以上の株式又は300個以上の議決権を保有する株主は会社法上の株主提案権を行使することができます。
株主提案権とは会社の株主総会に議題を提案できる権利です。そして、毎年定期的に開催される定時総会の時期に近ければそこにぶつけて提案しますが、定時株主総の時期でなくても、少数株主権(一定比率の株式を保有する株主に会社法上認められる権利)として臨時株主総会の招集・開催を請求し、それと併せて株主提案権を行使してくることも法的に出来るのです。
そして、それに先立ち、予め議題の内容、例えば増配要求や取締役の辞任・自己の息のかかった取締役の選任、会社の特定事業の売却を主張し、事前に予め自己のこれら主張を公表して株主に自分の主張を知って貰い、株主総会で他の一般株主の賛同を得て、自己の主張を通すのです。日本企業に対するアクティビストの実例でここまで成功した事例があるかどうかは調べていないので何とも言えませんが、海外企業(特に米国)に対してはこのような主張が通ったケースもあると聞いています。
また、真摯な対応ととともに、会社としては、日常において安定株主作りをしておくことも重要です。理由は、前述のようにアクティビストが他の株主を巻き込んだ場合でも、会社をサポートしてくれる株主、即ち安定株主を確保しておくことが重要になるのです。安定株主とは通常はメインバンクや取引先等が該当しますが、有事に備えてこの安定株主の比率を増やしておくのです。

従い、会社としては、このためにも常日頃の活動において、投資家への説明会を開くなどし、自社を良く理解してもらい自社の本当の「味方」を作っておくことが大切になります。

最近の新聞報道で、ある大手電機メーカーが5年ぶりに個人投資家向けの説明会を開催したという記事を目にしました。2009年の個人投資家比率は30%強あったが、2016年3月末では25%弱まで落ち込んでいたが、個人株主には自社の成長戦略を理解して頂き、安定株主を作るというような報道内容でした。 これがアクティビスト対応の一環として行ったかどうかは勿論分かりませんが、アクティビストが出現した場合になるべく会社側提案に賛同してくれる株主を多く味方につけるという点からはこれまで安定株主とは言えなかった個人投資家にも会社の魅力度や将来の成長を理解して頂き、有事の際には会社側の味方になってくれるよう努力することがとても切になると思います。
なお、安定株主といっても有事の際にはその安定株主が本当の安定株主になるかは少し疑問があります。安定株主も、仮に上場企業であれば自社の株主に対する説明責任が問われ、仮にアクティビストの主張の方が理にかなっている場合には、安定株主が自社の株主からの圧力を受けて、アクティビストの主張に賛同でざるを得ないような状況が生じる可能性も十分あり得るのです。とすると、個人株主であってもこれを安定株主とするような活動は大切になります。
少し長くなりましたが、結論としては、真摯な対応と平時においての十分な想定対応と安定株主作りがポイントになるように感じております。