中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

買収防衛策の廃止の動きの増加

本年の定時株主総会終結の時をもって買収防衛策の更新期限を迎える企業が買収防衛策を廃止する動きが強まっています。

本年に入ってから、比較的名前の知っている上場企業ですと、クラレ、ダイワボウ、日本ハム、ワコール、京浜急行電鉄阪和興業帝人、ワコール、日本曹達理研機器などが廃止を発表しています。

背景としては、各社プレスリリースに色々と書いてはいますが、要するに本音は、議決権行使助言会社が買収防衛策に対する反対を一層強めたこと、また、国内機関投資家も昨年以上に反対を強めているため株主総会で買収防衛策議案の賛成率を獲得することが困難となっていることにあります。

ちなみに、上に記載した各社の直近(2017年3月期)の有価証券報告書に記載の外国人株主比率を見ると、クラレ 37.73%、ダイワボウ 28.05%、日本ハム 32.16%、ワコール 19.35%、京浜急行電鉄 15.10%、帝人 36.09%などとなっています。有価証券報告書では、国内機関投資家保有比率は明示されていませんが、いずれの企業も外国人株主比率が高い状況にあることが分かります。

買収防衛策廃止に当たって、廃止企業は次の点を考えることが必要になります。
1 廃止する理由について株主への説明
株主総会で株主の承認を得て、これまで継続更新をしているので、今回、継続更新しない、つまり廃止するということは、買収防衛策を廃止しても、買収防衛策導入の目的を達成できるということを説明することが必要になります。

2 安定株主比率の低下の中、アクティビストの出現リスクに対する対抗策の準備
買収防衛策が廃止されるということは、アクティビストにとってのハードルは低くなるといわれています。大量の株式取得をする場合、買収防衛策がある場合、買収防衛策の発動を嫌ってアクティビストは株式の大量買付けに進むことを躊躇するケースがありますが、廃止することでアクティビストにとってのハードルが低くなります。

廃止企業としては、アクティストを跳ね返せる理論武装と長期保有機関投資家を自社の味方とする準備が必要になります。

日本の上場企業全体(コーポレート・ジャパン)に占める外国人株主比率は約30%ですが、今後、政策保有株式の解消により、その解消分の株式を国内機関投資家及び外国人株主が引き受けることになりますが(個人株主は資金が乏しいので、保有できる株式数には所詮限界があります)、今後のアクティビストの出現に備えた十分な対応が必要になるのではないでしょうか。

勿論、上場企業約3700社のうち、買収防衛策をそもそも導入していない企業が約80%超になるわけですから、その他多くの上場企業と同じ立場になったことから、あまり気にする必要はないと考えることも一応いえます。しかし、これは「赤信号、皆で渡れば怖くない」の発想と同じで、「赤信号を渡る」(=買収防衛策を廃止する)ことで「自動車にぶつかる」(=アクティビストに狙わわれる)リスクは全員にあるということですす。