中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

ESG投資とは

2016年12月17日の日経新聞にESGマネー取り込みという記事がありました。最近のホットな話題として、「ESG投資」があります。

ESG投資とは、環境(environment)、社会(social)、統治(governance)に取り組む企業を選んで投資するというものです。日経新聞の記事によればGPIFがこの投資を取り入れる方針をとったことから注目が一気に高まったようです。

最近、いくつかの機関投資家と話をしたところでも、温度差はあるにせよ各機関投資家ともESGに取り組んでいくようなニュアンスが感じられ、個人的な感覚としても数年前に比べて機関投資家の考えの変化は肌で感じております。機関投資家には、当たり前ですが、アナリストがいてアナリストは会社の業績といった財務情報を中心に見ているのですが、今後はESGといった非財務情報も投資の判断材料に組み込んでいくのかも知れません。

とはいいますが、個人的にはどこまでESG投資が評価されるのか疑問もあります。

機関投資家は大量の資金を顧客から預かりそれを株式投資などで運用して、配当と株式の売却で得たキャピタルゲインから自分の儲けをとり、資金の運用委託者である顧客に配分するのです。とすると、対象会社の株価が上がることが1つの前提になりますが、株価上昇の大きな要因は対象企業の業績になります。

極端な話をしますと、業績が営業赤字が続いている会社があり、この会社は業績は悪いが、ESG活動にとても積極的に取り組んでいるとします。しかし、このような会社に投資する機関投資家はいるのでしょうか。肝心要の業績が低迷していては、株価が上がるとは到底思えず、当然多くの機関投資家の投資先にはならないと考えます。

としますと、ESG投資で市場で評価される企業というのは、結局はその前提として業績が好調であり、それに「おまけ」としてESG活動に積極的に取り組んでいることという条件が付くような気がします。

そもそもとして極めて基本的な話ですが、株主・投資家は何故企業に投資するのかというと、投資を上回るリターン(インカムゲインとしての配当、キャピタルゲインとしての株式の売却益)を得ることが目的なので、ESG活動によって「株価がどの程度上がるか」がポイントになります。

ちなみに、配当は、毎期会社が儲けた最終利益が貸借対照表上の純資産の繰越利益剰余金として溜まり、そこから一定割合を株主に還元するものなので(正確にいいますと貸借対照表の資産の部にある「現金」が確保されている必要がありますが)、ESG活動によって配当が増えるとは考えにくいです。従って、ESG活動により期待できる余地があるのは株価になります。

企業を取り巻く環境には、その時々によってホットな話題があり、私の記憶では十数年以上前には、米国型の企業統治として委員会等設置会社が話題になり、ソニー日立グループ各社を中心に導入をしたかと思いますが、結局は導入企業数は70~80社程度にとどまっています。東証の上場企業数がざっくり約3500社と考えると極めて小さい数ですね。ホットが話題がその後も浸透するのかは、必ずしもそうとは言えないのが現実です。

とはいいますも、私もESG投資の本質を理解できていないところありますので、今後の動きなどを見て何かあればアップデートしたいと思います。