前回に引き続き、中小型銘柄、かつ割安銘柄企業の財務分析として、日本アンテナ(6930)を分析してみたいと思います。
同社は東京都荒川区に本店のある東証ジャスダックの上場会社です。売上高は2018年3月期で143億円、従業員数は連結ベースで約400名程度、株式時価総額は108億(10月18日現在)の中小型銘柄です。
同社の2018年3月期の決算短信及び有価証券報告書からポイントとなる財務情報を拾いますと、次のとおりになります。
数字は千万円単位を四捨五入して丸めています。
売上高 144億円(月商 12億円)
現金及び預金 115億円
政策保有株式 11億円(有価証券報告書記載「純投資目的以外の投資株式」)
有利子負債 0億円(BSの短期借入金+長期借入金)
ネットキャッシュ 126億円
総資産 243億円
流動資産 193億円
流動負債 32億円
株主資本 196億円
時価総額 100億円(10月18日)
配当性向 136.6%
上記の基礎データから分析をすると次のとおりになります。
流動比率 603%
株主資本 80.7%
ネットキャッシュ対株式時価総額 126%
ネットキャッシュ対総資産 52%
ネットキャッシュ対月商 11倍
PBR(株主資本÷時価総額) 0.51倍
数値を見て分かるとおりキャッュが潤沢で、株価が割安であることが分かります。
ここで1つ留意すべきは、同社は本年3月末現在で合同会社M&Sが約3%の株式を保有し、大株主となっています。合同会社M&Sは投資ファンドであり、世間では物言う
株主と言われております。
ここでこの投資ファンドの投資の意義について触れてみたいと思います。
同社のホームページを読むと、同社の方針として「強く意志ある投資で世界経済にインパクトを与える」とあります。個人的には、投資の強い意思を端的にあらわす非常に印象に残るフレーズと感じました。
何度かブログで書いておりますが、個人投資家は、資金力に乏しいため投資先に会社法上の権利を主張するのは単独では難しく、結果、株式を購入した後は、投資先企業の株価があがること、配当を増やしてくれることを「祈る」ことしか現実には出来ません。
しかし、会社法における規定では、株主とは会社の実質的所有者であり、議決権の行使を通じて自分たちが選任した役員を通じて会社の経営に参画できることが本来の権利です。しかし、経営を付託した役員が株主の意思に沿ったパフォーマンスを上げていない場合であっても役員を解任することができず、つまり、個人投資家は会社の経営に参画すらできないのです。
このような中にあって、投資ファンドは「強い意思ある投資」をして、経済的弱者である個人投資家に代わる役割を果たしてくれることになります。
ところで、投資ファンドは、企業価値があがった時点で売却するということになります。
日本アンテナの株価は現在740円で、合同会社M&Sがいくらで株式を取得し、今後、追加取得するのかどうか分かりません。合同会社M&Sがどう今後動いていくのか興味深いため、日本アンテナの事業内容や将来性は良くわかりませんが、自分の勉強目的のため、先日、日本アンテナの株式を最低投資単位購入してみました。
基本的には、今後M&Sが日本アンテナに何らかの提案をした場合には私は100%賛同することになると思いますが(もっとも、最低投資単位の株式保有など、ある意味ゴミのような投資単位ですので、私の議決権行使など日本アンテナの経営に対する何の影響も与えるものではありませんが)、M&Sの今後の動きに関心をもって見て行きたいと思います。