コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

フェア・ディスクロージャー制度

先日の新聞報道によれば、企業統治分野でのルール改正動向として日本スチュワーシップ・コードの改定、監査人ガバナンスコードの導入、金融商品取引法の改正(フェア・ディスクロージャールールの導入)、17年度税制改正とありました。

この中でフェア・ディスクロージャールールの導入については、運用機関サイドのアナリストにとっても大変に関心のある内容かと思いますが、同じく企業サイドではアナリストの対応窓口となるIR部門にとっても今後どこまでの情報を開示できるのか関心が高いテーマかと思います。

フェア・ディスクロージャーとは、直訳をしますと「(会社情報の)公平な開示」という意味になります。投資判断に重要な影響を与える情報について、アナリストや大株主といった特定の第三者にのみ提供するのではなく、「フェアに」(公平に)開示することとするルールです。勿論、東証に開示する適時開示事項や金商法で規定するいわゆるインサイダー情報はそもそも開示前に個別に特定の人や会社に話をすることは、法律違反になりますので、これに当たらない重要な情報の開示について対象になるということかと思います。

上場企業は、決算発表の際の決算説明会にアナリストを集めて決算の説明会を行ったり、国内外の大株主といわゆるスモールミーティングを開催して会社の状況や課題の個別説明を行っています。しかし、フェア・ディスクロージャールールの考えを厳格に考えると、基本的にこのような行為は好ましくないということになります。

としますと、会社としては、①アナリストや大株主へのこういった情報の提供をやめるか(情報提供に消極的な会社の場合)、②決算説明会の質疑応答の内容(ちなみに決算説明会資料は通常はホームページで公表済みと思います)やスモールミーティングの資料や議論の内容を全てホームページで公表する(情報提供に積極的な会社の場合)といったことになってしまいます。

こうなりますと、①の場合、アナリストが一般投資家に提供する会社レポートを作成するに十分な情報が得られません。一方、②の場合、会社サイドの負担が大変重くなります。決算説明会での質疑応答を全部メモにして内容を整えて公表するということは大変な作業かと思います。モを正確な議事にするのも結構時間がかかるのに、公表するとなると担当が書いたメモを更に上の上司や社内会議で討議するようなこともあり、それだけで労力が大変なことが容易に想像されます。
会社の負担が大変大きくなりますので、ある会社は、フェア・ディスクロージャーの議論の高まりの流れを受けてアナリストへの月次の業績開示をやめ、アナリストには不評であるようなことを聞いたこともあります。なお、欧米企業の決算発表を見るとアナリスト説明会の詳細な討議メモを公表している会社も何社か目にしたことがあります。

フェア・ディスクロージャーは、通常国会に提出される見通しとの新聞報道ですが最終的にどのような内容になるかは分かりませんが、上場企業、アナリストにとっては関心の高いところと思います。