中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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TBSドラマ「半沢直樹」について専門的な視点から解説(第3話より)ー 3億ドルの出資を受けたらスパイラルは完全に上場廃止ですよね

先日、第3話の途中まで見た内容をブログに書きましたが、昨夜、録画の続きで第3話の後半を早送りで見ました。

内容は、証券取引等監視委員会の調査が何故か途中で終わり、また、スパイラルとフォックスが業務提携し、米国のグーグルのような巨大企業からスパイラルが3億ドルの出資を受け入れるというものです。さて、本日も2点ほどドラマのシーンで現実の実務にはあり得ない点を指摘したいと思います。

まず最初に、フォックスの巨額損失を半沢直樹がマスコミにリークをして、スパライラルの敵対的買収を有利に進めようとしたところ、当局から情報入手の点を指摘されましたが、それに対して、フォックス社の社長が自分が半沢直樹に伝えたことを当局の担当官に誇らしげに回答しています。このシーンですが、これってインサイダー情報の漏洩に当たる可能性大ですよね。

インサイダー情報とは金融商品取引法で規定されていますが、当局が問題にしていることから、フォックスの巨額損失はインサイダー情報に当たります。とするとそれを会社関係者でない東京セントラル証券の担当者である半沢直樹にフォックスが伝えるのは、インサイダー情報の扱い上、法的問題ありです。

インサイダー情報を特定の第三者だけに開示して、東京セントラル証券はスパイラルのアドバイザーとして株価の下がったフォックスを買収して経済的利益を得るのですから、おそらくインサイダー規制上、とても大きな問題かと。それを当局の担当者に誇らしげにフォックスの社長は語るわけですから、荒唐無稽です。

次に、スパイラルは米国のグーグルのような企業から3億ドルの出資を受けるのですね。約300億円の出資です。法的には第三者割当増資といいます。さて、ここで疑問ですが、スパイラルの株主資本はどの程度あるのでしょうか?

スパイラルは、ベンチャー企業が勢いでマザーズあたりに上場した程度のような小さい会社ですので、資本金はあっても数十億円程度と思います。とすると300億円の出資を受けるとなるとスパイラルの瀬名社長の株式保有比率も数パーセントになり、一方、出資する米国企業の株式保有比率が90%以上になります。これは、ほとんど会社の身売りに近く、また、特定株主比率が高いので、当然上場廃止になります。これを誇らしげにマスコミを集めて、発表しているのですが、腹を抱えて笑ってしまうくらい荒唐無稽なシーンです。出資のシーンは10~20億円程度にしておかないと、ストーリーがめちゃくちゃテキトーです。

さて、半沢直樹ですが、録画して見るのも疲れてきましたので、本日の解説で最後にしたいと思います。私に限らず、投資銀行の方はじめ、荒唐無稽な内容のドラマとして見ている方もかなり多いと思いますが、いちいち深く考えずに、M&Aなど知らない素人のTV会社が制作したドラマとして見ると面白いかとは思います。

私は医学の知識はゼロですが、昔ドラマにあった「外科医 大門未知子」(こんなタイトルだったような)、「白い巨塔」などのドラマもプロから見たら荒唐無稽なシーンばかりなのでしょうね。ということで、半沢直樹の解説は本日で最後にしたいと思います(ドラマは面白いので録画をして時々見ます)。