中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

2019年6月以降に発行される上場企業の有価証券報告書の見るべき改正箇所-第3回

 

2019年3月期の有価証券報告書の記載事項が大きく変更されるということで前回、政策保有株式の開示について紹介しましたが、本日は役員報酬の開示の変更について紹介したいと思います。

役員報酬には、固定報酬と業績連動報酬があるところ、欧米と比較して、日本企業は固定報酬の割合が非常に大きく、業績連動報酬の割合が低く、これについて資本市場から批判を受けています。

つまり、固定報酬が多いということは、会社業績が良くても悪くても安定的に報酬を受け取れることになります。

しかし、役員は法律上は経営陣であり(「役員」とはいっても、常務又は専務クラスにならないとそれほど大きな権限は持っていない企業もかなり多いかとは思いますが)、業績に責任を負うのであり、従って、業績が低迷した場合には報酬も下がる業績連動型の報酬制度が望ましいということが言われているところです。

では、2019年3月期の有価証券報告書から役員報酬の開示はどのよに変わるのでしょうか。詳細は内閣府令に規定されていますが、つい先日の5月20日の日本経済新聞にも分かりやすく記載されていました。新しい開示内容を分かりやすくポイントだけを以下あげます。 

  • 役員報酬の決定・支給方法やこれらに関する考え方
  • 業績連動報酬と業績連動報酬以外の報酬等の支給割合の決定方針
  • 業績連動報酬の指標と当該指標を選択した理由
  • 業績連動報酬に係る指標の目標及び実績
  • 報酬を決めている者、権限の内容 など

非常に細かい内容の開示が求められております。業績連動報酬に係る指標の目標と実績の開示などは、目標未達の場合には、役員の報酬との関係性がかなり明確になるのではないでしょうか。

 私の感覚だと大手企業は業績連動報酬に対する意識も最近高くなってきていますが、私が株式投資する中小型銘柄の企業は、有価証券報告書コーポレートガバナンス報告書を見ると固定報酬がかなり多いのが現状です。

中小型銘柄企業は、取締役といってもオーナー社長を除けば、大手企業の部長(場合によっては課長)クラスの年収しかない企業もかなり多く、その場合、更に業績連動などとすると年収が減る場合も出てくるかと思います。そういうことを考えると業績連動報酬の割合を増やすことは、なかなか難しいところがあるとは思います。

 しかし、私もそうですが、投資先企業の株価と配当にしか関心がないのが投資家であり、上場企業は、今後はTSR(株主総利回り)をより強く意識をしないと、今後は役員報酬をネタに色々と株主かはじめ投資家からつつかれることになると思います。

いずれにせよ、本年6月の定時株主総会後に開示される各社の有価証券報告書の記載が関心のあるとことです。

最近はESG関連を役員報酬の業績変動指標に入れる企業もありますので、このあたりを次回または次々回に紹介したいと思います。