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経営企画担当の実務上の視点

東証1部上場企業で経営企画担当のマネージャー職にあるものです。経営・事業企画担当の立場から M&A、事業戦略、IR、戦略法務についてアカデミック+実務の視点からの気付いた点や考えることについて情報発信していきます。

会社法改正「株主提案権の乱用的行使の防止」

コーポレートガバナンス

 

2月10日の新聞記事によれば、法務省会社法の改正の検討課題を設定して検討に入ったとのことでした。検討課題の目玉が株主提案権の乱用的行使の防止ということのようです。

株主提案権とは、会社法上の少数株主権の1つで、議決権の1%または300個以上の議決権を一定期間保有している株主は、出資先の会社の株主総会に議案を提案できるという権利です。通常、毎年6月に開催される定時株主総会の場合、会社側の提案する議案が株主総会で議題に諮られるのですが、これに対して株主が自己の考える議案を提案するという権利です。

具体的には、取締役選任議案で会社側がA氏を取締役選任候補としている場合、別のB氏を株主が取締役選任候補として提案することや、定款変更議案として会社の事業目的に「~事業」を追加することを提案するようなことです。

記事によれば、株主提案権はこの5年間で倍増しているとのことのようです。株主提案権は、少数株主に認められた権利であるのですが、問題は乱用的に行使されて、株主総会の事務に大きな影響を及ぼすことで、野村ホールディングスは2012年に「社名を野菜ホールディングスに変更」することの株主提案を受けたと記事に書いてありました。

この記事を読んで思い出したのですが、20年ほど前の入社間もないときに法務部に所属していて商事法務業務を担当していたとき、当時、政策保有や純投資で多くの企業の株式を保有していましたが、その中で鉄道会社や空輸会社の株主総会の招集通知を見たときに、株主提案として「トイレ清掃事業の追加」であったり、他にほとんど冗談としか思えない内容の事業を会社の事業目的に追加するよう定款変更の株主提案が招集通知に書かれていました。当時は入社2年目の時でしたが、目が点になった記憶を思い出しました。

現在は総会屋が株主総会で活躍するという時代でもないので、こういう提案をする株主がどういう素性であるのか分かりませんが、株主総会の招集通知の作成はじめ総会事務局を実務担当した経験のある者としては、総会準備で多忙な時期に、このような冗談半分の提案をされていたらと思うと、実務の担当者の大変さが目に浮かびます。

こういう冗談半分の嫌がらせのための乱用的行使はさておき、企業の敵対的買収という観点では、少数株主権の行使は重要な株主の手段になります。

特に最近のアクティビストを見ると数パーセントの株式を取得して株主提案権を行使して会社に自己の議案を提示した上で、他の一般株主の賛同を求めるときに利用することもあると思います。

アクティビストの目的は、企業価値を高めひいては対象会社の株式価値を高めてキャピタルゲインを得る、あるいは配当を増やして投資のリターンを得ることが目的ですが、最近は米国ではアクティビストが入った方が会社が良くなるとしてそれに賛同する一般株主も多いと聞いたこともあります。とすると、株主提案権は企業価値を高める上で重要な法的権利といえます。

そうなると何が乱用的行使であるかの判断は難しいところもあると思います。たしかに、社名を「野菜ホールディングスに変更する」というのは乱用的行使と言えるとは思えますが。

2019年以降の法案提出を目指すということのようですので、引き続き注視したいと思います。