中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

次期トップの後継者計画(サクセッションプラン)は課題大ですね ー コンプライしている企業の株主総会で質問すると面白いかと

本日の日経新聞で「後継者計画、議論56%どまり」というタイトルで次の記事が掲載されていました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC226G60S3A520C2000000/

後継者計画とは経営トップの後継者の育成をどう計画立てているかで、サクセッションプランと言われることが多いです。記事によれば、日本企業でサクセッションプランが策定され、それに基づき次期社長が選定されているケースはまだ道半ばといった内容かと思います。世の中で良く言われていることですね。

現社長が自分の判断でお気に入りの部下(=イエスマン)を次期社長候補にするというのが多くの企業の現状かと思います(なお、社長といってもサラリーマン社長のことです)。2018年に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは次のように規定されています。

4-1③ 取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。

取締役会が主体的に関与することが求められています。誰を後継者にするかはセンシティブな内容ですので、詳細は指名委員会等で議論されることが多いですが、実際のところ十分な議論がなされている企業は少なく、サクセションプランすらない企業も多いと言われています。

サクセッションプランは、次期の社長候補について複数の候補者を選定して、育成して最終的に絞り込むというプロセスがあり、かつ、それが透明性をもって運用されていることが肝です。日本企業の多くは、現社長が自分の後継者を決めることが多いですが、この場合、社長に引き上げてくれた現社長に恩義を感じ、次期社長は現社長の実行した施策を否定するような行動は決してとらず、自分が社長でありながら、引退した元社長にいつまでも頭が上がらないという点が問題と言われています。社長とは言え、サラリーマンなので4~6年の任期が内規で決まっており、退任後は社長OBとして、先輩役員OBたちと楽しく老後を過ごしたいというのは誰でも考えるところです。しかし、これでは企業価値を高める大胆な施策を打てず、株主価値の向上に障害となりますね。

コーポレートガバナンス報告書をフルコンプライしている企業は、このサクセッションプランはどのように策定して、取締役会でどう監督しているのでしょうか?特に業績低迷が続いている企業の株主総会などで質問すると面白いかも知れません。

あらためて思いますが、コーポレートガバナンス・コードは物言う株主の武器ですね。個人投資家の方を対象に「コーポレートガバナンス・コードの実務的な読み方」のようなセミナーを開いてみたいところです。