今回は第2回目になります(第1回目の記事は最後に再掲しております)。コーポレートガバナンス・コードが2015年に制定されてから、多くの上場企業における社外取締役の員数はかなり増えたかと思います。取締役会に占める社外取締役の比率が3分の1以上の企業も多いかと思います。
次なる課題は、社外取締役の質です。数は揃ったのですが、果たして取締役会では企業価値向上に向けた十分な討議が出来ているでしょうか? 機関投資家とエンゲージメントをすると、この手の質問が必ず出ます。
社外取締役の数は増えたが、所詮は社外取締役は社外者であり当社の事業に精通していない場合も多く、特に弁護士や学者が社外取締役の場合、彼らの多くは事業の素人であるため、ビジネスの本質に関する十分な議論に至らず、定例の法的議題の審議にばかり時間がとられ、重箱の隅をつつく議論に終始している企業も多いように想像します。そこで、次のような質問が考えられます。
- 取締役会では会社法上求められる決議事項以外に、戦略的討議や中長期テーマの討議にどの程度の時間を費やしているか
- 社外取締役が自社と異なる業界の出身者の場合、当社事業に精通していないことが多いが、社外取締役は機能しているか。機能しているというのであれば、取締役会では社外取締役から具体的にどういう質問やアドバイスが出ているのか。社内取締役の説明を追認するだけになってはいないか
- 社外取締役への十分なレクチャーはしているのか。しているのであれば、その具体的内容は。執行サイドから事業の個別説明の機会であったり、工場見学の機会を設けているか
- 取締役会のマイノリティー集団である社外取締役がチームとして力を発揮するには、社外取締役間の連携が必須であるが、社外取締役だけの会合等を定期的に開催して、十分な情報共有と人間関係の構築は出来ているか
- 上記の1~4の事項について今後、統合報告書等でも詳細に開示して欲しい
取締役会の議論の様子、特に社外取締役がどう貢献しているかを確認するための質問事項になります。今年の有価証券報告書では、取締役会や指名委員会・報酬委員会等の活動状況に関する情報開示の拡充が求められています。
取締役会での議論の状況は、従前から機関投資家の関心が高いところであり、開示に積極的な企業は、結構細かい内容を統合報告書で既に開示しています。個人株主の方も投資先企業の株主総会で上記質問をして、社外取締役の具体的な貢献の度合いについて、取締役会での議論の内容とあわせて確認すると良いかと思います。
纏めますと、①企業の中長期成長の戦略の議論を取締役会でしっかりとやっているか、②その戦略の内容は何であるか(中期経営計画に記載されている内容が多いですが、長期での内容も重要)、③社外取締役は中長期の戦略の議論に具体的にどのように貢献しているのか(取締役会での具体的な指摘・発言)がポイントです。
私の投資先の某中小型銘柄で社外取締役に都内の中小クラスの法律事務所の弁護士が就任しているのですが、本人の経歴からして、町の弁護士で事業に精通しているとは到底思えないため、この社外取締役は中長期での企業価値向上においてどういう機能を果たしているのか、週明けの決算発表後に質問をしてみる予定です。