中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

男性育休率の積極的な開示 ー 数字の開示と併せて企業が考えるべき大事なことは?

私が中長期で投資するある中小型銘柄があるのですが、この企業にはここ2年、最近のコーポレートガバナンスの動向を踏まえて積極的な提案や質問をIR部門にしているのですが、その影響もあってかどうかは分かりませんが、この企業の開示がこの1年でかなり充実してきて、それに伴い株価も上がってきています。元々高い経営資源のある企業なのですが、開示が十分でなくアナリストカバレッジも少ないので、市場であまり知られていないのですが、個人的には長期(10年以上)での成長が期待され、PBR1倍割れが続いているので、中長期の機関投資家目線での合理的な意見を続けています。更なる買増しをしようか検討中です。

本題ですが、本日の日経新聞に「男性育休率を積極開示」との記事がありました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1653X0W3A210C2000000/

たしか有報等での開示も求められる事項かと思います。私が社会人になった頃は、男性が育児休暇を取得するという概念など皆無で、ほとんどの日本企業では、男性社員が会社に育児休暇の取得申請をしようものなら、その瞬間から一斉に白い目で見られ、人事評価でもマイナス評価となり、出世から外れる時代だったと思います。それが長らく続いたかと。それに比べると、男性の育児休暇の発令を目にすることも非常に多く、良い時代になったなと心から思います。女性ほど長期の休暇を取得する男性はまだまだ少ないのが世の中一般かと思いますが、そもそも子育ては夫婦の共同作業です。男性の育休取得日数と取得率が今後も高まり、それが当たり前の世の中になることを男女の子供を持つ親として切に願っています。

さて、この育児休暇の取得ですが、数値だけを開示すればよいでしょうか? 「開示が要請されているから開示する」というスタンスの企業も多いですが、開示をする際には常に資本市場、つまり機関投資家を意識することが重要です。とすると、数値だけ開示するのでは不十分であり、これに絡めての企業の人的資本をセットで開示することが肝になります。大きく2点あるかなと思います。

1点目は、男性の休暇が増えるので、戦力が一定期間不足することになるため、その戦力不足をどう埋めるかです。ここを明確にせずに、「当社の男性の育休率を高めます」といっても機関投資家からすると、休む人が増えて「業務の方は大丈夫?」と疑問に思います。女性であっても優秀な方が育児休暇に入ると戦略ダウンになることが多いです。能力の高い女性・男性には早く復帰して欲しいと切望する上司の方は多いと思いますし、機関投資家もそう思っています(私なども、育休中の能力の高いある女性に「早く復帰して欲しい」と心の中で切望している状況にあります)。

2点目は、女性の活躍をどう企業の成長戦略と絡めるかです。男性の育休取得=女性活用ということに繋がるはずです。従い、女性の社員比率や管理職比率が高まりますが、これを企業の成長にどう絡めるかが重要です。女性の数を増やすことだけが至上命題のように誤解している、ダイバーシティー勘違いの方も企業には少なからずいますが、投資家にとっては正直、女性が多かろうが少なかろうが本質においてはどうでも良く、企業価値を高めてくれれば良いのです。だからここをいかに市場に説明するかが肝になると思います。もし、女性を増やしたところで企業の成長にはたいしてプラス効果がないと現状考えるのであれば、そういう整理をして、1つ目の箇所の説明に重きを置くことで良いのだと思います。

いずれにせよ、単なる数値の開示だけでなく、それから派生する事項などをセットで開示することだ大事になります。