中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

株主提案に対する議決権行使助言会社の賛成推奨分析が今後大事

先日、東芝の分割案の株主総会議案に対して議決権行使助言会社のISSが反対推奨したことが新聞で大きく報道されました。ISSの賛否推奨に海外機関投資家はどうしても頼らざるを得ません。日本企業のコーポレートガバナンスはじめ法制の詳細を知ることには限界がありますので(外国人が日本法制に精通していないことは当然と言えば当然)、ISSの賛否推奨に頼るところが大きくなります。ISSの判断がその企業の施策を決定するというのは、巨大な権限を持ち過ぎであり、問題であると私は考えますが、しかし、この状況がこの数年で改善されるとは思えません。

では企業として何をなすべきかといいますと、株主提案についてISSが賛成推奨をした案件をきちんと分析することが大事になるのだと思います。

最近の事例ですと、3月29日に株主総会の開催を予定している鳥居薬品に株主提案がなされていますが、それについてISSが賛成推奨をしました。次のプレスリリースに詳細が記載されています。

https://www.torii.co.jp/release/2022/20220310_1.pdf

賛成推奨した株主提案は、定款一部変更の件(日本たばこ産業からの天下りの禁止)、定款一部変更の件(資本コストの開示)などです。ISSの賛否推奨レポートは英文であり、かつ、一般には入手できないので(有料)詳細全文は私は読めていませんが、プレスリリースを読むと、ISSの賛成推奨のポイントが記載されています。

当然、鳥居薬品は反論をしていますが、個人的には「資本コストの開示」などの株主提案の内容は極めて合理的であり、その点をISSは評価して賛成推奨したのだと思います。機関投資家と会話をすると株主資本コスト、資本コストの開示を求める声も強いです。ブログでは今回の株主提案の詳細分析まではしませんが、上場企業は他社での株主提案の事例を「自社のこと」と考えて分析することが、今後、より大事になってくるのだと思います。

ところで、「鳥居薬品への株主提案の可決の行方はどうか?」というと、定款変更は株主総会の特別決議であるため68%程度の株主の賛同が必要なところ、鳥居薬品の株式の過半数は日本たばこが有しおり、日本たばこは株主提案に反対するのだと思いますので、株主提案が可決される可能性は極めてゼロなのだと想像します。

大事なのは否決・可決ではなく、今回の株主提案に賛同する株主がどの程度出てくるかを企業は分析する必要があります。総会後に臨時報告書が開示されますので、後日、賛成率を記事で書く予定です。