東京、大阪で携帯販売店経営をしている日本テレホンという会社があります(ジャスダック)。先日、第三者割当増資を決定したところ、日本テレホンの筆頭株主であるサイブリッジ合同会社より不公正発行に該当するとして差止請求がなされたようです。
日本テレホンの増資、筆頭株主が差し止め請求へ: 日本経済新聞
サイブリッジは前にもブログで触れたことがありますが(最後に再掲します)、ある会社のMBOにおいてMBO価格が低いことを理由に見直しを求めたこともあります。四季報オンラインの日本テレホンの大量保有速報によれば、サイブリッジの日本テレホン株の保有比率は、2月2日付の報告書によれば37.69%となっています。サイブリッジが日本テレホンに経営陣の解任等を求めているかは不明ですが、約38%の株式を保有する中での第三者割当増資は、日本テレホンは、サイブリッジの支配力を弱めることが目的の1つにあるような気がします。では、この差止めは認められるでしょうか?
経営権の支配の争いがある中での第三者割当増資が許容されるか否かについては、とても有名な判例があります。ニッポン放送事件の判決です。これは2005年頃にライブドアがニッポン放送の敵対的買収を試みたことに端を発するニッポン放送による新株予約権発行の差し止め請求での東京高裁の決定ですが、決定要旨を簡単に纏めると次のような内容になります。
経営支配権の争いが生じている場面において、経営支配権の維持・確保を目的とした新株予約権の発行がされた場合には、原則として、不公正な発行として差止請求が認められるべきであるが、株主全体の利益保護の観点から当該新株予約権発行を正当化する特段の事情があること、具体的には、敵対的買収者が真摯に合理的な経営を目指すものではなく、敵対的買収者による支配権取得が会社に回復しがたい損害をもたらす事情があることを会社が疎明、立証した場合には、会社の経営支配権の帰属に影響を及ぼすような新株予約権の発行を差止めることはできない
最近の買収防衛策の発動を巡る裁判でもベースにはこの判例の考えがあります。今回のケースでは、サイブリッジが「真摯に合理的な経営を目指すものではなく、敵対的買収者による支配権取得が会社に回復しがたい損害をもたらす」ということを日本テレホンが疎明できるか否かがこの差止め請求の肝になるような気がいたします。引き続き、注視したいと思います。