コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

MBOにおけるTOB価格の留意事項 ー 株価算定は3つの方法で行うのが大事です

少し前の日経新聞で「企業価値の評価は適切か」ということで、片倉工業のMBOの失敗の要因が掲載されていました。片倉工業のMBOのケースでは、賃貸等不動産の時価の含み益を考慮するとTOB価格に対する実質的なPBRは1倍を下回るということです。MBOについては次のとおりMBOの指針を経産省が公表しているところです。

「公正なM&Aの在り方に関する指針-企業価値の向上と株主利益の確保に向けて-」を策定しました (METI/経済産業省)

日経新聞の記事では、過去にMBOが失敗したケースがいくつか掲載されていましたが、その中で光陽社のケースがあげられていました。少し調べてみたところ、以下のような記事があります。

サイブリッジ合同会社は株式会社光陽社(東証二部 証券コード:7946)に対する株式会社KKのTOB価格935円の見直しを要請します - サイブリッジグループのプレスリリース

これによると、MBOの際のTOB価格を935円としていたところ、1294円への引き上げを求めたようですね。MBOで揉めるのは株価の算定です。つまり、MBOで会社を買うのは現経営陣であるところ、現経営陣としては金銭的負担を考えるとなるべく安く買いたい、一方、対象会社の経営陣であることから対象会社の少数株主としては、なるべく高い価格でMBOを実施して欲しいというように相反する立場にあります。よって、TOB価格が揉めるのです。

光陽社のケースでは、市場株価法、DCF法の2つで算定されたようですね。市場株価は、過去平均株価で算定する方法であり、過去の株価が低いと当然ながら理論株価であるTOB価格は低くなります。一方のDCF法は将来のフリーキャッシュフローをベースに算定するので、将来の事業計画の見通しが暗い場合、算定される株価も低くなります。

とうことで、類似会社比較法であるマルチプルでの算定がなされていなかったようで、この手法によれば、もっと高い理論株価が算定されたということのようですね。マルチプルであるEBITDA倍率ですと類似会社平均が6倍強ということで1294円ということのようです。至極もっともな指摘です。

マルチプル法は、PER倍率やEV/EBITDA倍率を使用するので、類似会社が複数あり、かついずれも上場会社であることがポイントにはなります。このように、MBOをする際には、市場株価法、DCF法、マルチプル法の3つで算定して検討するということが重要になります。なお、市場株価法の場合には、どの時点の株価をとるかという点も重要にはなります。