コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

上場企業の長期・超長期プランには機関投資家は関心ないと思います ー 何事も経営トップの在任期間にフォーカスすべき

7月21日に経済産業省が新しいエネルギー計画を公表しました。既に新聞報道のとおりですが、30年度の比率を①再生エネで36~38%②原子力で20~22%③温暖化ガスを排出しない水素やアンモニアによる発電で1%④火力で41%と提示されました。19年度実績で火力が76%であるのが41%にまで低下させる計画です。

この計画に対して、実現性が乏しいという批判が相次いでいるようで、エネルギー政策に詳しい橘川武郎国際大教授からは、「リアリティーに欠け、大きな禍根を残すのではないか。(電源構成案に)反対する。率直にいって帳尻合わせだ」という意見が新聞に掲載されていました。有識者の反対意見を見ると、多分実現は不可能なのでしょう。しかし、今回の政策を立案した役所の責任者の多くは10年後には、役職定年になっているか定年を迎えているのだと思います。ということを考えると、10年後の実現の可否について、その時点では担当としての責任を負わない立場にありますという現実に鑑みると、責任を負わない10年後の実現の可能性などより、今時点の世の中の動きを踏まえた政策を立案するインセンティブが優先するというサラリーマンである役人の本音だと想像します。

さて、このケースを見て思うのは企業の長期・超長期計画です。ほとんどの企業の中計経営計画は3年~5年ですが、これはとてもしっくりきます。それは、多くのサラリーマン社長の任期は4年~7年というところだと思いますが、社長が責任を負う在任期間内での計画だからです。中計経営計画が未達となると立案した経営トップの能力が問われ機関投資家から批判され、株式が売られます。

しかし、問題は10年、15年といった長期・超長期の計画を公表することです。これは明らかにサラリーマン社長の在任期間を超える、つまり未達でも自分の責任が問われない計画と言えます。従い、長期・超長期計画の実現性を公表したところで機関投資家は軽視するのだと思います。勿論、大きなざっくりとした方向性というか希望を開示するのは良いことなのだと思いますが、それを超えて細かい計画を公表しても意味がないということです。

本年6月のコーポレートガバナス・コードで、企業にはサステナビリティの取組みの策定が求められました。サステナビリティとは、企業の持続的成長です。つまり10年、20年を超えて成長を続ける上での課題への対応の策定が求められました。一方、繰り返しになりますが、オーナー社長とは異なりサラリーマン社長には任期があります。とすると、持続的成長という言葉を額面どおり解釈をして、10年、15年を超える空想を策定したところで資本市場関係者には全く響かないということになります。そもそも10年を超える計画など外部環境がどう変化するか専門家含め誰にも分からないので、全く読めないということもありますが。この点を企業は理解する必要があります。

CSRおじさん・おばさん」「サステナビリティおじさん・おばさん」のような人物が企業によっては存在するかも知れませんが、そういう方には機関投資家の目線ということを理解させることが大事で、その理解が出来ていないと、CSRコンサルタントのような業者にいいように利用され、資本市場に響かない計画を公表し、陰で笑われるという事態になりかねません。何事も経営トップの在任期間を上限としてプランを立案・公表するのが肝要かと思います。