中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

特定標的型・有事導入型の買収防衛策のすすめ ー 事前警告型買収防衛策の代替スキーム

昨日は連休初日でしたが、家族4人で神奈川県にある大きなプール施設に行きました。朝に車で家を出て帰宅が20時と丸1日かかりましたが、屋外で1日過ごすと気分爽快ですね。本日は、メインイベントである家の掃除のほかに、新聞情報整理、ツイッターチェック、読書などをして過ごし、明日は午前中はプールで1時間30分ひたすら泳ぐ予定です。

さて、事前警告型の買収防衛策ですが、ブログでもこれまで何回か記事を書いていますように機関投資家からの反対が益々強く、廃止企業もこの数年でかなり増えています。現時点での導入企業数は200社台かと思います。このような状況下、機関投資家の株式保有比率が一定比率を超える企業では、継続をどうするか悩んでいるところかと思います。

「買収防衛策は継続すべき」と単純に考えている人も中にはいるかも知れませんは、資本市場の最近の動きを知っていればそんな単純なことではないです。事前警告型の買収防衛策はESGの「G」のマイナス要因ともなり、将来的にはESG評価でマイナス評点がつき、投資対象から除外されるリスクもあるのです。株式時価総額1000億円以上の企業は「企業の品格」にも注意を払う必要がありますので、ESG評価は無視できない話かと思います。

では、どうすべきかですが、事前警告型は廃止して、特定標的型の有事導入の買収防衛策とするのです。ブログで連載しております富士興産、東京ソワールなどはこのスキームです。つまり、自社の株式を取得する大量買付者が出現した段階で、取締役会の決議で買収防衛策を導入し、対抗措置の発動準備又は発動をします。そして、その後、速やかに株主総会を開催して、買収防衛策の導入と対抗措置の発動の2つの議案について株主の賛同を求めます。その際には、株主総会で株主の賛同を得られなかった場合には、取締役会決議で発動した対抗措置の効力は遡及的に喪失されるという条件をセットにするのがポイントです。細かいところは色々と検討すべき点もありますが、大きな骨格な以上のとおりです。

このスキームが法的に100%万全かというとそれは断言できません。裁判所の判断が出ていないからです。しかし、日本アジアと旧村上ファンドの攻防においては株主総会を経ていなかったことが、日本アジアの対抗措置が差し止められた大きな要因とされています。このことを考えると、特定標的型・有事導入型の買収防衛策は一定の合理性を有すると言えます。

平時においては、有価証券報告書の「株式会社の支配に関する方針」でこのあたりに少し触れておけば、事前開示の原則という2005年頃の買収防衛策ガイドラインも一応充足すると主張できます。検討されてはいかがでしょうか。