株主サービスを提供しているアイ・アールジャパンは今年の定時株主総会で次のとおり定款一部変更議案を上程することを予定しています。内容は、場所の定めのない株主総会の開催を可能とするための定款変更になります。
https://www.irjapan.jp/ir_info/release/pdf/notice_20210514.pdf
産業競争力強化法等の一部を改正する法律でバーチャル株主総会が可能となるため、アイ・アールジャパンは自社でも早速、これができるよう定款を変更しようとするものです。ところがこの定款変更議案に対して、議決権行使助言会社のISSがなんと反対推奨をしたようです。この反対推奨に対して、アイ・アールジャパンは次のとおり見解を公表しています。
https://www.irjapan.jp/ir_info/release/pdf/notice_20210528_1.pdf
この中で「ISSが示している懸念点」として次のとおり記載されています。
(1)バーチャルオンリーの株主総会は、株主が行う取締役の責任追及に影響を与える可能性があり、経営陣及び株主の間の有意義な交流を妨げる可能性がある。
(2)株主提案を受けた場合や委任状争奪戦になった場合には、会社と株主の間の交流が重要となるが、バーチャルオンリーの株主総会では、そのような交流が有意義に行われるかどうかは疑問である。
(3)バーチャルオンリーの株主総会に関する公的な議論は日本で始まったばかりであり、現在のところ、ベスト・プラクティスに関する株主や企業の間のコンセンサスは得られていない。産業競争力強化法改正案では、企業は、2年間は暫定的な規制緩和を利用し、定款変更をすることなく、バーチャルオンリーの株主総会を開催することが可能であるから、現時点で定款変更をする必要がなく、ベスト・プラクティスが確立した後に定款変更を行えば足りる
バーチャルオンリー総会の定款変更に水をさされたことになりますが、アイ・アールジャパンには予想外だったのではないでしょうか。株主総会のサービスを飯の種にしているアイ・アールジャパンとしては、法改正とともに自社の定款変更をして、バーチャル株主総会を顧客への営業材料にしたいのだと思います。それに反対されるとは、少し間抜けというか、面白い状況です。一方で、バーチャルオンリー株主総会を否定するISSの判断も少しどうかなとは思います。法律で可能となったことを定款で規定することに反対するというのもおかしな気はします。
アイ・アールジャパンの2021年3月末現在の株主構成は不明ですが、有価証券報告書で2020年3月末の株主構成を見ると、金融機関11.66%、外国法人19.93%、個人その他65.71%となっています。もし、2021年3月末でもこの構成比と同様とすれば、定款変更議案は可決されるでしょう。反対するのは外国法人くらいでしょうから。