中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

成長への事業選択を要求する株主提案の増加の可能性 ー 事業再編実務指針の精読の薦め

5月18日の日経新聞に「来るか、株主提案『第3弾』」とのタイトルの記事がありました。最近の株主提案は従来のものと質が変化し、企業がどう成長するかを追求する動きに変化してきているというものです。

株主提案は第1弾から第3弾の流れにあるということが書かれています。第1弾は増配や自社株買いを求める株主提案です。「金を貯め込むな」「余剰資金は株主に還元しろ」という提案です。これまで良く見られたケースです。低いROEの改善を根拠に提案するケースです。

第2弾は、ガバナンス型の株主提案です。コーポレートガバナンスを踏まえた株主提案になります。ブログでも書いていますが、最近の事例ではストラテジックキャピタルが投資先企業に対して、政策保有株式の売却や買収防衛策の廃止を求めるケースなどがこの典型例です。コーポレートガバナンス・コードの趣旨を踏まえた株主提案と言えます。物言う株主としては、第2弾の株主提案の後に、増配などを求めることが多いので、第1弾とセットの株主提案とも言えるかと思います。

そして、第3弾が会社に成長戦略を提案するという内容の株主提案です。この第3弾は難易度が高く、株主提案をするアクティビストは、外資系の大手コンサルティングファームを起用して、提案書を作成することが多いです。それだけ内容の精度も高いので、この提案に賛同する機関投資家も多いと言われています。また、そもそもこの手の株主提案は、その内容を会社がのまなくても、会社がこの提案を受けて企業価値向上施策を検討するので、有益であると言われています。記事では、この第3弾の株主提案として、米国のバリューアクト・キャピタルによるセブン&アイに対するコンビニへの集中又は分離の提案、米RMBキャピタルによるフェイスに対する日本コロンビアのIPOが事例として紹介されています。

この提案の内容を詳細分析するには時間的にも内容的にも難しいので、ブログでは内容は触れませんが、経済産業省は2020年に事業再編実務指針を策定し、企業に適切な事業ポートフォリオを検討するよう求めていることもあり、この手の提案は今後機関投資家の賛同を得ることになるのだと思います。上場企業の経営企画担当部門の取締役の方には、この指針を一度しっかりと読むことをお薦めします。「事業再編に関する実務指針」は以前にブログで紹介していますので、再掲いたします。事業再編実務指針を読み込み、投資先企業に株主提案をしたいと考えている個人投資家の方がいたら、提案内容などを一緒に検討したいところです。